高コスパで人気のASUS!ハイスペックSIMフリー端末提供の裏側:SIM通
ASUSは、もともと「マザーボード」の製造を請け負う、台湾の町工場的な会社だった。それが、いまやSIMフリースマホのトップセラーのひとつに。今回は、ASUSという会社の歴史を紹介します。
ASUS(エイスース)と聞いて「マザボの会社!」と即答するのはもはやオジサン。いまやASUSはSIMフリースマホのトップセラーのひとつです。いったい、どんな会社なのでしょうか。
ASUSはもともとはマザボ、つまり「マザーボード」の製造を請け負う、台湾の町工場的な会社でした。マザーボードは、PCのいろいろな部品を載せる「基板」に当たる部分です。基板とはいっても、単なる板ではなく、人間の体でいえば神経系、筋肉、内臓の一式を取りそろえ、目・耳・鼻・口・手足など、入出力と頭脳だけが付いていないだけの、完成品一歩手前の「システム」に当たります。PCにとってはCPUもメモリもグラフィックスも重要ですが、それらが連携・協調して動くための最も大切な仕事をしているのがマザーボードです。
マザーボードを作っていた会社ですから、そもそも「コンピューターをゼロから作る」ということが可能なくらいの技術力を、もともと持っていたわけです。ASUSにとっての一大転機は、2000年代に発売した自社ブランドPC。マザーボードをメーカーに提供するだけではなく、ついに一般消費者向けの製品を世に送り出すに至ったわけです。誤解のないように書いておくと、もちろんそれまでもマザーボードやグラフィックスカードなどを、消費者向けに販売していました。しかし、それらはあくまでも「PCを自作・改造したりするマニア向け」だったので、ASUSが完成品を販売するというニュースに、PCマニアたちは驚いたものです。
そのASUSのPCは、当時としてはエポックメイキングな格安PCとして大ヒットしました。その頃、「PCはメーカー品より自作したほうが安い」と言われることも多かったのです。しかし、その自作PC市場を支えていたASUSが出したPCは、自作PCではまず実現できないような低価格とコンパクトさを備えていたのです。
その後、時代はスマートフォンに移ります。スマートフォンはいろいろな部品がモジュール化されていて、ちょっとした設計技術と生産技術があれば誰でも作れるくらいに単純化されていました。そうしたことから、それまでPCや携帯電話製造の下請けをしていたような中国や台湾のメーカーが、当然のように一斉に参入したのです。
「すぐ壊れる」だの「動きが怪しい」だの、挙句のはてには「表記スペックと中身が違う」まで、なんでもありだった中国界隈で作られたスマホは、言ってみれば「格安SIM向けに格安スマホを」とでも主張しているようなもの。国内で発売されるSIMフリー端末も「ちょっとマシなものを輸入してみました」みたいな印象が強かったです。
イメージが良くなかったSIMフリー端末の知名度を上げたのがASUSが投入したのがZenFoneシリーズです。安かろう悪かろうという市場で「必要なスペックを割安」で提供した最初のSIMフリースマホと言えるかもしれません。その後もZenFoneシリーズはコストパフォーマンスを軸にしながら進化を続けます。その結果、費用対効果がよく多くの人に実用的なミドルレンジの端末が各社から登場するようになり、今のSIMフリー端末市場が出来たと言えるでしょう。
今年発売した「ZenFone3シリーズ」はミドルレンジに留まらない「ハイスペック機」への挑戦です。当然、端末によっては価格もそれなりに高価で、発表当初の市場の反応は「そんなものが格安SIM市場で売れるの?」と懐疑的。ところがふたを開けてみると、発売前から予約が殺到し、発売後は売り上げランキングの常連になりました。需要に生産も追いつかず受付を一時中止するほどの騒ぎになっています。
ハイスペック機での成功は、その品質の高さがポイントになりました。それもそのはず、注文の厳しいマニアはもとより、品質要求の厳しい大手PCメーカーなどに、マザーボードというコンピューターにとって一番壊れてはいけない部分を供給していたメーカーですから、品質には折り紙付きです。キャリアの厳しい品質管理で出荷されている大手キャリア向け製品に比べても引けを取らない品質と性能でありながら、SIMフリーなんですから人気になるのも当然です。
これは、かつて格安PCで一世を風靡したASUSのメーカーイメージからは想像もつかないことかもしれません。ですが「『高品質の製造技術に裏打ちされたマザーボードメーカー』のASUSから」と言い換えてみると、案外しっくりきます。ASUSは高品質なものを適正な価格で送り出すことを旨とするメーカー。販路拡大のためにキャリアブランドを冠し、トータルで高価格となってしまうくらいなら、SIM料金を節約し良いものを見合った価格で使ってもらいたい。そんな思いがあったからこそハイスペックの高級機をSIMフリーとして送り出した、といえるのではないでしょうか。
はっきりいってしまうと、ASUSのスマートフォンは、「ここが特にすごい」という際立った特徴はありません。ですが、外形デザインと成型の丁寧さ、CPUやメモリの性能、通信関連の対応の広さ、搭載OS、全てが「ワンランク上質」できれいにまとめられていて、いわゆる「格安の」スマホにうんざりしていた高級志向のユーザに大いに喝采(かっさい)されています。
格安SIMだからと妥協してほしくない、手元にあるものはしっかりした上質なものを、というのがASUSからのメッセージ。今後も、Zenfoneシリーズのような「ちょっといいもの」のリリースが期待できます。安っぽいプラスチック筐体の格安スマホや、中古スマホに飽きてきたMVNOユーザーの方は、今後はASUSの端末にも注目してみてはいかがでしょうか。
(文:記者M)
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