Y.U-mobileが「ヤマダニューモバイル」を始める狙い、ソフトバンクSIMの勝算:MVNOに聞く(1/4 ページ)
U-NEXTとヤマダ電機の合弁会社、Y.U-mobileが「ヤマダニューモバイル」を提供。既存のU-mobileサービスをリニューアルする狙いはどこにあるのか。またU-NEXTに続きY.U-mobileも扱う予定というソフトバンクSIMの勝算はあるのか。
U-NEXTとヤマダ電機の合弁会社であるY.U-mobileが、ついに始動した。サービス名称は「ヤマダニューモバイル」。まずはドコモからネットワークを借りた「Dコース」をスタートさせたが、近く、ソフトバンクのMVNOサービスも投入する予定で準備を進めている。料金プランは、容量別に分かれたシンプルなもの。現時点では、通話定額などは提供されていない。
このネットワーク構成からも分かるように、ヤマダニューモバイルは日本通信をMVNEとして活用。U-NEXTがMVNO事業で培ったノウハウと、ヤマダ電機の持つ強力な販路を掛け合わせて、シェア拡大を狙う。一方で、もともとヤマダ電機は、「YAMADA SIM powered by U-mobile」を提供していた。
このタイミングで、なぜ合弁会社を作って新サービスの提供に踏み切ったのか。ソフトバンクのMVNOを始めた理由も合わせ、Y.U-mobile 代表取締役の二宮康真氏と、取締役の鹿瀬島礼氏に話を聞いた。なお、二宮氏はU-NEXTの取締役も兼任しており、U-mobileを率いている。そのため、インタビューでは、ヤマダニューモバイルだけでなく、U-mobileの戦略についても語られている。
ヤマダ電機のニーズに合ったサービスを提供する
―― 最初に、Y.U-mobileを設立した理由を教えてください。
二宮氏 もともと、「YAMADA SIM powered by U-mobile」をやっていましたが、これは役務提供者がU-NEXT側にありました。そのため、ヤマダさんの実際のニーズを全てくみ取れていたわけではなく、U-NEXTとしてのサービスを販売してもらっていた形になります。ヤマダさんの客層は、ファミリー層だったり、家電製品を買われる方だったりで、われわれのWebマーケティングとは若干、層が異なります。Y.U-mobileは、現場のニーズをお聞きしながら、ニーズに合ったサービスを提供していくために設立した会社です。
―― 具体的に、どういった点がサービス内容に反映されたのでしょうか。
二宮氏 今後やっていく形になりますが、繰り越しサービスやパケットシェアを追加していきます。また、ヤマダさんが持たれているポイントとの連携もやります。ファミリー層であれば、ポイント連携やパケットシェアは必要だろうということで、U-mobileとは違った形になっていきます。
―― なるほど。逆に、こちらで導入したサービスをU-mobile側に反映させることもありそうですか。
二宮氏 一部はあると思いますが、U-mobileのコンセプトとして、使い放題をメインで販売しています。ここには、繰り越しという考え方が持ち込みづらい。シェアは取り上げていきたい気持ちはありますが、使い放題だとなかなか難しいところはあります。
―― ヤマダ電機では、U-mobileの販売も続けるのでしょうか。
二宮氏 続けます。すみ分けはできていますからね。ただし、店頭ではヤマダニューモバイルを勧めていきます。今のプランでユーザーニーズの全てをくみ取れない場合、それ以外に入れていくことになります。
―― 店舗数の規模はいかがですか。
二宮氏 全店舗でやっています。これは、(ヤマダ電機の)子会社のベスト電器も含めてです。ただし、即時開通は4月中旬以降になります。
鹿瀬島氏 (即時開通は)レギュラー店500店舗で実施し、あとは順次展開していく形になります。
―― 初速はいかがでしたか。
二宮氏 よかったです。まだ即時開通ができていませんが、期待値よりも上で、順調な立ち上がりでした。これは、もっと伸びていくと思います。
料金プランは「楽天モバイル」を意識?
―― ちなみに、料金プランを見ると、謎の「0.3GB」が端数としてありますが、これは一体……。
二宮氏 見ての通りですが、楽天モバイルさんを意識したものです(笑)。基本料金は同じですが、楽天モバイルさんより容量が多くなっています。
―― このような料金体系にした理由を教えてください。また、選ばれる容量に、何か傾向はありますか。
二宮氏 分かりやすくしたかったのはあります。MVNOの料金体系がこうなっているという認知は進んできていますからね。一番ユーザーに喜ばれているのが、10.3GBのプランで、初速から売れ始めています。
―― 10.3GBが多いというのは意外ですね。3.3GBや、5.3GBだと思っていました。
二宮氏 3.3GBや5.3GBも多いのですが、10.3GBが予想値より多かったということです。
鹿瀬島氏 割合でいうと、3.3GBと10.3GBが割れていて、5.3GBを選ぶ人は多いですね。3.3GBと10.3GBで約4割、5.3GBで約4割、残りは1割もいません。
二宮氏 繰り越しをやるのも、比較的使用量が多い人に喜ばれています。キャリア(MNO)の繰り越しとの違いは、繰り越した分から使っていくところで、お得に使えます。一方で、われわれはコンテンツも持っているので、上位プランでどう差別化を作っていけるのか。この連携は早急にやっていきたいと思います。
―― 大容量のプランが選ばれれば、それだけARPUも上がるので、MVNOとしても収益が上がりやすくなりそうです。
二宮氏 確かそうです。ビジネスを健全にするというのも、業界の課題の1つだと認識しています。ユーザー側が本当はロースペックなものだけを望んでいるわけではないことは、いち早く定額を出し、支持されたことが証明しています。あとは、差別化をどう図っていくのか、タッチポイントをどう作っていくのかが重要なテーマになるのだと思います。
―― 契約者数の目標はありますか。
二宮氏 公表しているものはありませんが、(意気込みとして)おおむね月間1万は超えていきたい。そういう意味では、最低でも年間10万はクリアしたいですね。最終的な目標としては、コンシューマーでまず100万というものはあります。
―― まずは、ドコモ回線からのスタートだと思いますが、ソフトバンクについてはいかがでしょうか。
二宮氏 今は準備中というステータスです。このサービスを作るにあたって、(4月)1日に間に合わせるために、スケジュールが過密だったこともあり……。
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