ドコモの訪日外国人向け「Japan Welcome SIM」は何が新しい? 使ってみて気付いたこと(1/2 ページ)
急拡大する訪日外国人向けプリペイドSIM市場にNTTドコモが参入。7月に「Japan Welcome SIM」の販売を開始。日本人でも購入できるので、実際に使ってみた。
東京オリンピック、パラリンピックが開催される2020年には、年間4000万人もの訪日外国人観光客を迎え入れる目標を立てている日本。毎年のように、訪日外国人は増え続けており、インバウンドビジネスも活性化している。通信もその1つで、MVNOを中心にプリペイドSIMカードの販売が活性化してきた。今では空港やホテル、コンビニエンスストア、家電量販店など、さまざまな販路で訪日外国人向けのプリペイドSIMカードを購入できる。
急拡大する訪日外国人向けプリペイドSIM市場だが、ここに満を持して参入したのが、ほかでもないMNOのNTTドコモだ。同社は7月に「Japan Welcome SIM」の販売を開始。現在は羽田空港、成田空港、関西空港などで、事前に申し込んだSIMカードを受け取ることができる。最大の特徴は、広告閲覧によって使えるデータ量が増えること。料金プランは高速通信がつかない1000円(税別、以下同)の「プラン1000」と、500MB分の高速通信がつく1700円の「プラン1700」の2つだが、広告閲覧によってSIMカードそのものが無料になる「プラン0」も10月にスタートする予定だ。
このJapan Welcome SIM、「訪日外国人観光客向け」とうたっているが、実は日本在住の人でも申し込むことができる。受け取り場所が主に空港に限られているため、気軽に契約するわけにはいかないが、急にタブレットでデータ通信したくなったときなどに使うことは可能だ。また、ビジネスモデルや技術的にも、注目しておきたいポイントが多いサービスといえる。そこで、筆者もJapan Welcome SIMを入手し、実際に使ってみた。筆者は海外取材の際に、現地のプリペイドSIMを購入することも多いため、その観点での比較も交えながら使い勝手を見ていきたい。
申し込みやSIMの受取はスムーズに完了、ただし要dアカウント
Japan Welcome SIMは、訪日外国人観光客が訪日前に申し込み、空港をはじめとする“日本の玄関口”で受け取る利用スタイルを想定している。そのため、申し込みはネットで行う必要がある。基本的にはプランを選び、支払いのためのクレジットカード情報を入力するだけで、手続き自体はそこまで複雑ではない。
ただし、利用のためには、dアカウントを取得する必要がある。試しに筆者の持つdアカウントでログインしようとしてみたが、既に契約しているドコモ回線とひも付いていたため、申し込みができなかった。そのため、新たにメールアドレスでdアカウントを取得している。
dアカウントの取得プロセスは、特に難しいわけではないが、外国人がわざわざこのために、普段使わないアカウントを作るというのは少々ハードルが高く、煩雑だと感じた。もっとも、プリペイドSIMカードの場合、オンラインチャージしようとすると、海外でも何らかのアカウントを作らなければいけない場合が多い。ただ、欲を言えば、FacebookやGoogleアカウントなどで代替できれば、もっと便利になるだろう。“おもてなし”を考えると、何らかの対応はしてほしいところだ。
動画1本見ると10MBがもらえる、広告の量は今後の課題か
Japan Welcome SIMの専用ページにアクセスすると、ドコモ側が用意した広告を見ることができる。現時点では、日本の飲食店などを紹介する動画しか用意されていないが、広告ページのカテゴリーを見ると、アンケートやアプリのインストールなども対象になるようだ。
動画は、短いものだと1本15秒程度。最初に閲覧してみた「ENJOY JAPANESE FOOD at PARCO!」は、あっというまに動画が終わり、高速データ通信量が10MB増えていた。これなら、サクサクとデータ容量が稼げそうだ……と思ったが、動画の長さはものによって異なる。もう少しデータ量をもらうと思って開いた別のコンテンツは、1分を超えていた。
もらえるデータ量は、どの動画を見ても1本10MB。現状では、20本の動画が用意されているため、合計で200MBぶん、無料でもらえることになる。ただ、1分を超える動画と15秒で済む動画が等価なのは、すんなりと納得できないポイント。使う時間が多いぶん、せめて1分以上の動画を見たときだけでも、20MBもらえるといったプラスアルファの要素が欲しかった。
スタートしたばかりのサービスなので、まだ試行錯誤の段階なのかもしれないが、今後の工夫に期待したいところだ。また、合計で200MBというのは、やや物足りない印象を受ける。200MBあれば1日、2日使うには十分かもしれないが、観光でマップを使ったり、SNSに写真を投稿していたりすれば、すぐになくなってしまう。将来的には、広告ラインアップの拡充も必要になるかもしれない。
これで足りないというときは、料金を払う形で、データチャージすることが可能だ。金額は、100MBで200円、500MBで700円。500MBをまとめて購入する方が、100MBよりも単価は安くなる。金額の妥当性は判断が難しいところだが、ドコモの通常の料金プランでは、1000円で1GBのデータをチャージできる。プリペイドプラン用のSIMカードを同額にするのは難しいのかもしれないが、もう少し安いと魅力も上がりそうだ。500MBの1つ上に、1GBの料金設定をしてあってもよかったような印象を受ける。
高速通信がつかないプラン1000だと、1000円かかった上に、チャージするとさらにそのぶんの料金が発生する。ドコモとしては、10月に予定されているプラン0が本命なのかもしれないが、500MBで1700円というのは、やや高い印象だ。空港を見渡すと、競合になりそうなMVNOが自動販売機やコンビニなどでSIMカードを販売している。
例えば、U-NEXTの訪日外国人向けプリペイドSIMカードは、1日に使えるデータ容量が200MBで、7日、15日、30日というように、期間を選択できる。料金は販路によってまちまちだが、7日で2000円前後。毎日フルに使い切ったとすると、1.4GBのデータ量になり、ドコモより割安に見える。ただしプラン0が登場すれば、仮に500MBを3回チャージして1.5GBぶん買ったとしても、料金は2100円で済み、MVNOよりも安価になるケースが増えてくる。広告閲覧で無料のデータ容量ももらえるため、お得感が出そうだ。
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