格安SIMの通信速度が遅くなる要因は何か:IIJmio meeting 16(2/3 ページ)
格安SIMは、通勤時やランチタイムなどに速度が遅くなりやすい。通信速度はなぜ遅くなるのか。そもそも通信速度はどのようにして測っているのか。IIJmio meetingでIIJの基盤開発課長 掘高房氏が説明した。
速度低下の大きな要因はPOIの帯域不足
携帯電話のデータ通信ネットワークには、端末、基地局、SGWとPGWがあり、その先がインターネットにつながっている。各ノード間をつなぐデータの通り道を「ベアラ」というが、ベアラをつなぎ合わせることで、最終的に端末がインターネットにつながる。各ベアラで発生している事象が、端末とインターネット上にあるサーバとの通信や速度に影響していく。
とはいえ、IIJmioの場合、借りているドコモやKDDIのネットワークは強固に作られているので、ここの問題によって全国的に速度が遅くなることはあまり起こらないという。IIJ自身も長年ISPとして事業を運営し、全世界にネットワークを張り巡らせて強いネットワークを作っているので、「インターネット側の事象によって最終的に通信が遅くなることはあまりないと思っている」(掘氏)。
では、どこが速度低下の要因になっているのか。掘氏によると、やはり一番はMNOとMVNOの間の「POI(Point Of Interface):相互接続点」と呼ばれる部分だ。「POIの帯域不足が速度低下の要因になることが、正直申し上げて一番多い」(掘氏)。POIの帯域は、MVNOがMNOから購入する接続帯域。MVNOが「帯域増強する」といった場合は、ここの帯域を増やしていると思っていい。
なぜPOIの帯域が不足するのか。さまざまな要因があるが、「短期的には需要の読み違えから不足する」。POIの帯域は、MNOに「○Mbps欲しい、○Gbps欲しい」と申し込む。その際、書類のやりとりが発生するので時間がかかるという。「だいたい1カ月先の需要を見越して帯域を増強しているが、突発的なイベントやOSアップデート、アプリのアップデートなどがあると読み違いが発生し、予測を外すことがある。ただ、「短期的なので、しばらく我慢すると直る。それに対策も1カ月あればできる」(掘氏)
もう1つの要因は、MVNOのビジネス的要因だ。MVNOは大手キャリアよりも安くサービスを提供している。「ISPやMVNOは設備産業なので、究極的には一定の設備、ここでいえば帯域にいかにたくさんのユーザーを“詰め込んで”、ギリギリの設備でやり繰りしたいのが本音。POIの帯域は、昔から比べるとかなり安くなってはいるものの、コストに占める割合はかなり大きいので、潤沢に足すことはできない」(掘氏)。コストと品質のバランスを最適に保つことがMVNOの事業のキモであり、「一番悩ましいところでもある」。
POIが混雑したらどうするか
読み違いが発生して、POIが混雑してしまったらどうするか。「できることはそんなにたくさんあるわけではない」といい、「どれかのパケットを破棄する(パケットドロップ)か、帯域に余裕が出るまで、ほんの一瞬だが送信を我慢(バッファリング、キューイング)」するという。
パケットドロップについては、通信事業者が自由にパケットを破棄していいわけではなく、通信の秘密やユーザー間の公平性、ネットワークの中立性といった制約がある。事業者の一方的な都合で、好き勝手に破棄するパケットを決めることはできない。
また、トラフィックは一定に流れているように見えるが、一瞬、一瞬をとらえると波があるという。そのため、送信を遅らせ、空きができたタイミングで流すことができる。これがバッファリング、キューイングだ。蓄えられる量には限りがあるので、遅らせられるのは長くても100ミリsecとか200ミリsec程度だが、一瞬、遅延する。
関連記事
- 「スピードテスト」にどれだけ意味があるのか?
MVNOの実力を測る1つの指標に「スピードテスト」があります。ただ、このスピードテストは正しいタイミング・環境で実行しないと、有意義な結果にならない場合があります。今回はスピードテストに影響を与える要因と、よりよい測定の仕方を考えていきます。 - 「スピードテストブースト」は可能なのか?
スピードテストアプリの測定結果と、実際の快適さが懸け離れている事業者さんがあるという声が聞かれます。ネット上では「スピードテストブースト」などと呼ばれているますが、このようなことは可能なのでしょうか? その技術的な背景について紹介します。 - ソフトバンクSIMの提供は? Y!mobileとUQは脅威? mineo×IIJmioトークセッション
4月8日に大阪で開催された「IIJmio meeting」で、ケイ・オプティコムとIIJがトークセッションを実施。ソフトバンクSIM、サブブランドについて、通信品質、カウントフリーなどについて、語り合った。 - 昼のMVNOは全て0〜1Mbps台に 「格安SIM」17サービスの実効速度を比較(ドコモ回線6月編)
格安SIMを選ぶうえで料金と並んで重要な「通信速度」。本企画では、主要な格安SIMサービスの通信速度を月に1回、横並びで比較する。今回は2017年6月のドコモ回線を使ったサービスの測定結果を紹介しよう。 - 混雑時にYouTubeを快適に視聴できる格安SIMは? 12サービスを比較(5月編)
4月から「通信速度定点観測」でYouTubeの動画再生テストもスタート。今回は5月編として最新の結果をお届けしたい。12サービスを比較した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.