「iPhone X」対抗の全画面モデルも登場? AIスマホの先にあるものは? Huaweiに聞く(1/2 ページ)
IFAで世界初となるAI対応チップを発表したHuawei。スマートフォンにAIが搭載されたその先に、同社はどんな未来を描くのか。ハンドセット部門ナンバー2のLi Changzhu氏を中国・深セン本社で取材した。
2016年、ライカとコラボレーションしたデュアルカメラで一躍注目を集め、先日のIFAでは世界初となるAI対応のNPU(Neural-network Processing Unit)を実装したプロセッサ「Kirin 970」を発表(関連記事)。10月16日には、そのプロセッサを搭載した新機種の発表も控えているHuawei。
次々と革新的な「先手」を打ち出してきた同社だが、一方でデュアルカメラはもはや当たり前になり、Appleからは一足先にニューラルエンジンを搭載した「iPhone X」も発表されている。
スマートフォン業界全体がコモディティ化したともいわれる中、今後競合他社との差別化を図る秘策は? また、スマートフォンにAIを搭載したその先には、どんな未来を描くのか。くしくも新iPhone発表直後というタイミングで、ハンドセット部門のナンバー2を取材した。
光学ズーム可能な新カメラモジュールも開発中
―― 早速ですが、今特に注力していること、技術分野があれば教えてください。
Li氏 弊社が注力しているのは一貫して「品質」「イノベーション」「サービス」の3つで、これはずっと変わりません。
品質面では故障率3%未満という、世界的に見ても高水準を達成しながら、さらに高いクオリティーを求めて努力を続けています。イノベーションについては、毎年売り上げの10%をR&Dに投資し、さまざまな分野で技術革新に向けた取り組みを続けています。その対象分野は多岐にわたりますが、中でも注力している分野の1つが、スマートフォンで最もよく使われているカメラです。
弊社ではP9以降、ライカと戦略的パートナーシップを結び、昨年(2016年)はMate 9、今年(2017年)はP10と、少しずつカメラの性能を向上させてきました。例えばP9のF値は2.3でしたが、P10では1.8まで向上させながら、かつ端末の薄さもしっかりキープしています。また機種ごとに光学品質、画像品質をチューニングして、ライカの専門家が主観的、客観的に厳しいチェックを行っています。
こうした画質へのこだわりは、例えば背景をぼかして人物を浮き立たせる「ポートレートモード」にもよく現れています。Appleの新製品でも、やはり同じようにポートレートモードについて言及されていて、消費者が今何を求めているか、お互い同じように受け止めているのだと思いました。
ライカと協業した理由
―― そもそも、カメラ機能に注力していこうと考えたきっかけは何だったのですか?
Li氏 一番はユーザーの声ですね。もっといい写真を撮りたいというニーズがあり、それに応えたいということがまずありました。とはいえ、レンズもセンサーも大きい従来のカメラと同様の品質をスマホで再現する簡単なことではありません。どうすればいいのか研究を重ねる中で、いろんな技術や経験を持っているカメラメーカーに学べないかと考えたのが、ライカとの協業のきっかけとなりました。パートナーにライカを選んだのは、光学設計に関して長い歴史を持ち、その技術が世界中に広く認められたトップメーカーだからです。
今から100年ほど前、ライカはそれまでの固定式カメラではなく、ポータブルに持ち運べるカメラを発売しました。カメラが持ち運べるようになったことで、風景から報道写真まで、撮られる写真も大きく変わったそうですが、今またスマートフォンでターニングポイントを迎えています。SNSには毎日何十億もの写真がアップされていて、写真の文化が大きく変わろうとしている。どんな風に変わっていくのか、楽しみでもあります。
―― 最近は他社でもデュアルカメラを搭載する端末が増えています。今後はカメラをどのように差別化していくつもりですか?
Li氏 同じデュアルカメラでも、その取り組み方は各社で全く違います。われわれが今取り組んでいるのは、1つには光学のモジュールそのものを良くすること。この分野に強い日本の企業とも密に連携しながら、開発を進めています。2つ目はカラー、モノクロ、動画も含めて、画像の品質を向上させること。デジタル処理やさまざまなモードの搭載などもその1つです。
3つ目はデュアルレンズに合わせた機能の開発ですね。被写界深度が測れるといったこともそうですが、今後は被写体を立体的にスキャンできる機能なども導入していく予定です。さらに4つ目として、デュアルレンズにこだわらず、新しいカメラモジュールの開発にも力を注いでいます。例えば今ライカとともに手掛けているのは、光学ズームに関するものです。今のスマートフォンで光学ズームを実現するには、モジュールの設計に新しい技術を導入しなければなりません。これは今後1〜2年のうちにカタチにしたいと思っています。
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