「iPhoneは強いと再認識」 榛葉副社長に聞く、ソフトバンクのモバイル戦略(3/3 ページ)
iPhone 3GからiPhoneを扱ってきたソフトバンクでは、必然的に“iPhone商戦”に力が入る。2017年はiPhone 8/8 Plusの発売に合わせ、「半額サポート for iPhone」や50GBの「ウルトラギガモンスター」を発表。同社のモバイル戦略を、iPhoneを中心に榛葉淳副社長に聞いた。
Y!mobileとのすみ分けは?
―― 現状を見ると、サブブランドのY!mobileの勢いが強いですが、ここはどうすみ分けしているのかをあらためて教えてください。
榛葉氏 私自身は、ソフトバンクがメイン、Y!mobileがサブという思いはなく、完全に両輪だと考えています。(飛行機で)エコノミーが格下かというとそうではなく、例えば3時間ならエコノミーでいいとあえて選び、その分ホテルを豪華にする方もいる。逆に、着いたらすぐに仕事をしたいからと、ビジネスクラスを選ぶ方もいます。
Y!mobileはエントリー層のお客さまで、まず使ってみたい、最新の端末でなくてもいいという方にお勧めしています。MVNO、格安SIMと呼ばれるいろいろな会社がある中で、30%から40%程度のご支持をいただいていますから、完全に両輪です。
―― そこからソフトバンクにアップグレードしてもらいたいとお考えでしょうか。
榛葉氏 まずY!mobileで「iPhone SE」や「iPhone 6s」をお使いいただき、やはりそれでも最新のiPhoneにしたいというときは、乗り換えサポートで約4万円分をサポートしています。(Y!mobileからソフトバンクに)乗り換えるときに少しご負担があるので、同じ兄弟として手厚くしています。結果、Y!mobileからソフトバンクへの乗り換えも増えていますね。一方で、Y!mobileも家族割などの条件を満たせば、料金が1480円からになります。これを1つのブランドでやるのは大変ですからね。
メインといっているのは、店舗が4000あることで、これは他のMVNOにはないものです。スマホは、結局サポートがないときつい。Y!mobileは全国各地にサポートの拠点があり、これもご支持いただけている理由です。今は、ソフトバンクとY!mobileの複合店もどんどん展開していて、お客さまにお越しいただいた際に、これなら料金の安いY!mobile、それなら最新の機種があるソフトバンクというように(セールスを)やっています。
もう1つ、サポートはあまりフォーカスされませんが、ソフトバンクではスマホアドバイザーを地道に立ち上げてきました。ソフトバンクショップには、新規、機種変更などのお相手をするスタッフがいますが、それとは別に、全国で700人以上のスマホアドバイザーが常駐し、お客さまからのありとあらゆる質問にお答えしています。
そのスマホアドバイザーの方々をヒアリングすると、彼らのストレスになっていることがありました。それが、iPhoneの故障受付ができないことです。使命としてお受けできないとアナウンスするものの、一般常識だと、テレビでも冷蔵庫でも、まずは購入されたところに行きます。アップルストアがある都内ならまだいいですが、地方だとかなりの時間がかかってしまう。そこで今、180店舗からスタートして拡大をしているところですが、故障受付もショップでできるようにしました。こんなところも、踏み込んでやらせていただいています。
Androidは特徴付けをしていく
―― Androidの新端末も発表されました。ソフトバンクは最も早くiPhoneを扱い始めたこともあり、iPhone比率も他社に比べると高いと思いますが、Androidはどうされていくおつもりでしょうか。
榛葉氏 これは、本当に強化していきたい。Androidをご支持いただく方もいて、やはり両輪です。ただ、以前のように何メーカーにもお声がけしてリリースすればいいかというとそうではなくなってきているのも事実です。メーカーはある程度絞り込んでいきますが、絞り込むがゆえに、そのメーカーと深い特徴づけをしたものを出していかなければいけないとか考えています。ソフトバンクのAndroidならこういうことができるのかというものは、逐次出していきたいですね。
―― 最後に、最近だと通信、特に速度のアピールがあまりないような気がしますが、これはなぜでしょうか。
榛葉氏 最高速度よりも、密集地帯でも安定して使えることを重視しているからです。ユーザーは5Mbpsなのか20Mbpsなのかを毎回チェックしているわけではありません。見たいものが、いつも通り動くかというところに集中しています。技術的には新しいものを追求していますが、本当のユーザーのストレスフリーは何か。それを考えたときに出した答えは、人が密集したエリアでも普段通りにお使いいただけるということです。ウルトラギガモンスターを50GBにしようと意思決定できたのも、そうした技術の支えがあったからです。
取材を終えて:徹底して複雑さを排除したソフトバンク
分離プランの「auピタットプラン」「auフラットプラン」を導入するのと同時に、上昇する端末代を抑えるために「アップグレードプログラムEX」を開始したauに対し、ソフトバンクは徹底して複雑さを排除した。一方で、ドコモは既にシェアパックで家族でのお得さを打ち出している。これが、2017年のiPhone商戦を俯瞰(ふかん)したときの構図といえるだろう。
確かに榛葉氏が述べていた通り、1年、2年とあらかじめ決めず、機種変更したいときに機種変更できるソフトバンクの「半額プログラム」は、ユーザーフレンドリーだ。50GBのウルトラギガモンスターや、みんな家族割も、条件が合えば非常にお得だ。ヘビーユーザーであればあるほど、魅力を感じる印象を受けた。ライトユーザー対策が手薄になっている感もあるが、ソフトバンクにはY!mobileもある。ソフトバンクとY!mobileの両方を売る複合店舗で、どちらのユーザーも獲得できるようにしているのは、合理的な戦略だ。
一方で、iPhone以外に目を移すと、Androidがまだ手薄な印象を受ける。現時点で発表済みのモデルを見ても、「AQUOS R compact」を除けば、他社にある端末が多く、厳しい見方をすれば、あえてソフトバンクを選ぶ理由が薄い。榛葉氏が語っていたように、ソフトバンクならではの特徴付けがされた端末が登場することも、期待したいところだ。
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