5G時代にQualcommが果たす役割 5Gチップの提供やアンテナ問題の解決も:Qualcomm 4G/5G Summit(2/2 ページ)
米Qualcommは「Snapdragon X50 5Gモデムチップセット」を発表した。2019年の商用サービス開始を予定している5Gの重要な製品だ。だがスマートフォンを5G対応にするための課題もあるという。
ギガビットLTEをスマートフォンに実装する苦労
今日ではインドなどの新興国を中心にLTE専業キャリアのようなものが出現しており、ネットワークを単一の技術で構成する例も珍しくない。だが前述のように5Gの世代ではLTEと5G NRを含むハイブリッド構成をある程度想定しており、幅広い分野で引き続き既存のLTEネットワークの活用が続いていくだろう。
2017年2月に開催されたMobile World Congressにおいて、QualcommはギガビットLTEのブランドで最大1.2Gbps対応のSnapdragon X16 LTEモデムの提供を発表しており、これを搭載したスマートフォンを各社が発表して話題になった。その1社であるソニーモバイルコミュニケーションズの製品開発担当バイスプレジデントの村田和雄氏は、ギガビットLTEの先にあるスマートフォンでの高速ネットワークへの対応における課題と解決方法を説明している(発表済みの機種では、Xperia XZ PremiumとXperia XZ1が下り最大1Gbpsの通信に対応している)。
1つはデバイス設計時におけるアンテナで、ミリ波などの高周波数帯域の電波はその性質から直進性が強く手で持ったときの影響が大きいことを挙げている。また出力に結び付くゲインを上げるためにアンテナアレイと呼ばれる仕組みを構成するが、このように手で端末を持ったときの影響を軽減するため、複数のアンテナアレイを適切な場所に配置する必要があるという。
現状のXperiaでは目的ごとに異なる複数のアンテナを本体側面に配置しているが、これをより小型で効率的に配置できる仕組みが必要だとしている。先ほどAmon氏が紹介していたレファレンスデザインでは、このアンテナアレイを含む仕組みが組み込まれている。各メーカーはレファレンスデザインを活用することで、端末のアンテナ設計における問題を解決できるようになる。
また村田氏は、ソニーの5G時代に向けてスマートフォン以外でのデバイスでの通信機能搭載に向けた取り組みを語っている。現在はXperiaスマートフォンやXperia TouchなどのXperiaブランドを中心とした展開だが、今後はカメラやカムコーダーを含むイメージング製品、ゲーム機やVR機器、さらにはホームエンターテインメントやヘッドフォン製品など、同社の持つ幅広い製品ポートフォリオへの応用も考えているようだ。
5Gへの対応により、ケーブリングなしでのスタンドアロンでの機器利用のほか、どこでもクラウド連携が可能になることで新しい機能が利用できるようになるなど、製品の可能性がより広がる。ソニーだけでなく、各メーカーのアイデアにぜひ期待したいところだ。
4G、5G世代で見据えるスマートフォンの次の世界
Qualcomm自身もスマートフォン以外の分野で有望なものとして、自動車、モバイルPC、IoT、ネットワーキングの4つを挙げている。
車載分野は特に今後の自動運転本格化の中で活用がさらに進むことが期待されているが、Qualcommにとっては比較的新しい分野といえるPC向けのプロセッサ提供、具体的にはSnapdragonを搭載したフル機能のWindows 10が動作する常時接続型のモバイルPC製品も大きく期待される。IoT分野ではLTEの活用が期待できるとしており、特にNB-IoT(Narrow Band IoT)と呼ばれる低速・低消費電力で安価な通信技術を使い、センサーネットワークの分野での導入を増やしていきたい構えだ。これにより、2035年までに12兆個と呼ばれるIoTを含むネットワーク接続可能機器の分野でのシェア拡大を狙っていく。
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