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急成長を遂げる中古携帯市場 課題は「参入障壁」と「ユーザー心理」中古携帯の動向を追う

急成長を遂げている日本の中古市場。今後成長する上で鍵を握るのは? 今回は中古携帯市場の現状と課題を掘り下げます。

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中古携帯市場が急成長したきっかけ

 全世界のマーケットサイズが2兆円を超え、2020年には3兆円に達するといわれるほど急成長している中古携帯市場。

 国内の中古市場が形成され始めたのは2008年頃。これまではほそぼそと存在していた市場の契機となったのが、2007年の総務省がキャリアへ提言した「端末価格と通信料金の区別の明確化(いわゆる端末と契約の分離)」でした。

 総務省の当時の報告書には、「通信料金・端末価格の透明性・公平性の確保、利用者にとっての選択の幅の拡大を目的として、端末価格と通信料金が区別された分離プラン等を2008年度をめどに部分導入する方向で検討することが望ましい」と記載されています。

 これにより、日本のモバイル市場は、端末の一括購入から割賦契約に、そして端末代金が高騰する時代に入り、ドコモは2007年11月に、KDDIは2008年6月に割賦販売をスタートしました(ソフトバンクは先行して2007年1月に導入済み)。

 このような背景の中、端末を安く購入でき、割賦契約をしなくてもいい中古携帯のニーズが拡大し、本格的にマーケットが形成されていきます。

 大手調査会社のMM総研によると、中古携帯流通台数は2008年度が52万台だったところ、2014年度には約4倍の211万台に急増。2016年度には238万台(約380億円)に到達しています。2020年には300万台(500億円)突破が推測されています。

中古携帯
中古携帯販売数の市場規模(MM総研調べ)

 市場規模は右肩上がりですが、2016年は前年比1.2%減でした。その原因として挙げられるのが、

  1. キャリアの下取り施策
  2. 販売奨励金の規制や実質0円で1次流通が減った
  3. SIMロックフリー端末の増加

 現在、2の販売奨励金や実質0円施策が抑えられたことで、中古市場は2017年からまた右肩上がりになっています。他業界から見ても非常に魅力的なマーケットといえます。そのマーケットを狙って、ゲオ、ブックオフ、TSUTAYA、パシフィックネットなど大手会社が相次いで参入しています。

 最近の参入傾向は、当社携帯市場のように本業として参入する会社はほぼ皆無で、中古携帯事業を第2、第3の柱に育てたいという企業がほとんどです。

中古携帯市場への参入障壁

 実際、中古携帯市場への参入障壁はどのようなものがあるのでしょうか? 主に4つあります。

1.買い取りルートの確立

 中古ビジネスの成功のカギは、買い取りです。自社の店舗やWebで買い取る以外のルートをどこまで確保できるか。FC(フランチャイズ)で戦うのか、代理店方式にするのか、はたまた他業種と連携するのか、いろいろな戦術が選択できます。

2.販売チャネルの確立

 Yahoo!オークションなどで安く売るのではなく、適正価格で販売できるチャネルを確立する必要があります。最近は、さまざまなECサイトと店舗を在庫共有するマルチチャネル化がトレンドになっています。

3.買い取り販売価格の値付け

 買い取りに偏ると不良在庫を抱えてキャッシュが死ぬ結果になり、販売に偏ると商品がなくなるというジレンマに陥ります。買い取りと販売の値付けが非常に難しいです。

 また、基本的に買い取った端末は時間がたつと共に販売相場価格が下がっていきます。いつ売るのが最大の利益になるのか、時間軸との戦いでもあります。

4.バックオフィスの確立

 商品の品質を保ちつつ、バックオフィスの経費を下げないと利益が出ません。検品のマニュアルを作成したり、作業者を監督するリーダーを育成したりする必要もあり、この項目もハードルが高いです。

 2016年の販売奨励金禁止と実質0円禁止の影響で、中古携帯の仕入れの質が大きく変わりました。以前は最新機種を高値で買い取りして海外へ流すのがトレンドで、実際にもうかっていた業者がたくさんいました。

 2016年を契機に、この手法でもうかっていた業者は淘汰(とうた)され、中古携帯をコツコツ販売していた業者が生き残りました。2017年、中古ビジネス本来の中古品を流通させるという意味において、中古携帯市場はここから第2のスタートなのかもしれません。

「中古携帯を使いたくない」理由にどう向き合うか

 今、中古携帯は、

  • 価格が安い
  • 2年など契約期間の縛りがない
  • 中古で十分
  • これまで使っていたのが壊れたから
  • 複数の端末を使い分けしたい
    ※MM総研調べ

 などのニーズを持つお客さまが購入しています。

 その一方で、

  • 中古携帯なんて知らない
  • 前の所有者が不明だから怖い
  • 中古携帯を生理的に受け付けない
  • バッテリーも持ちが心配
  • 価格メリットを感じない
  • 故障や紛失時のサポートが心配
  • 汚れや傷があるから

 などの理由で中古携帯を使いたくない人がたくさんいるのも事実です。これらの声にどう向き合い、どういった説明をしていくのか、私たち事業者は消費者の皆さまから問われています。

 当社携帯市場が代表理事企業を務める中古携帯の業界団体「リユースモバイル・ジャパン」は、11月24日に消費者に安心・安全に中古携帯をご使用いただけるようにガイドラインを策定しました。

 一般消費者の方に認知を増やし、理解をしてもらうことこそが中古携帯市場の未来につながると信じています。

リユースモバイル・ジャパン
リユースモバイル・ジャパンが発表したガイドライン。詳細はこちらから

著者プロフィール

粟津浜一

株式会社携帯市場 代表取締役

粟津浜一

 1979年岐阜県生まれ。2004年筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了。その後ブラザー工業にて、さまざまな研究開発業務に従事。2009年株式会社アワーズ設立、社長に就任。2017年株式会社携帯市場に社名変更。中古携帯を日本中に文化として広めることをビジョンとして、中古携帯市場動向セミナー、事業説明セミナーを行い、これまでに1000以上の店舗に中古携帯事業を展開、コンサルティングを行っている。


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