総務省の新ガイドラインが中古携帯業界に与える影響:中古携帯の動向を追う(1/2 ページ)
実質0円の廃止や長期利用ユーザーの優遇などで大きく変動している携帯電話業界。中古業界にはどのような影響を及ぼすのでしょうか? これまでの経緯を確認しながら解説していきます。
実質0円の廃止や長期利用ユーザーの優遇などで大きく変動している携帯電話業界。2017年1月10日には総務省が「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を策定し、SIMロック解除期間の短縮やキャリアの下取り金額の見直しが行われます。今回はこの指針が中古携帯業界に与える影響について解説します。
最初に、これまでのいきさつを時系列でまとめました。
2015年
- 安倍晋三首相が携帯電話料金引き下げに言及
- 総務省ICT安心・安全研究会が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を数回実施
2016年
- 4月1日に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を発表。実質0円にメスが入る
- 8月2日に公正取引委員会が報告書「携帯電話市場における競争政策上の課題について」公表。携帯電話業界が独占禁止法に抵触しないか、中古携帯端末の流通促進についても触れられている
端末メーカーやMNOを含め、中古端末購入者が、当該中古端末をどのように購入・処分するかは本来自由であるが、端末メーカー又はMNOが、不当に高い価格で中古端末を購入する場合には、独占禁止法上問題となるおそれがある(不当高価購入、取引妨害等)。
また、中古端末の処分に関連して、下記の行為を行う場合、MVNOの新規参入を阻害することにもつながり、独占禁止法上問題となるおそれがある。
- 端末メーカーが、MNOに対し、MNOが下取りを行った端末を国内で再び流通させることを禁止するなど、MNOによる中古端末の流通を制限する行為(拘束条件付取引、取引妨害等)
- MNOや端末メーカーが、自らが下取りした端末を第三者に販売するに当たり、第三者に対し国内市場での販売を制限する行為(拘束条件付取引等)
- 10月から「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を開催。SIMロック解除やキャリアの下取り価格等について議論される
2017年
- 1月10日に「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」策定
「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」では、
- SIMロック解除の円滑な実施に関するガイドライン
- スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン
という2つのガイドラインが改正、統合されました。それぞれのガイドラインの趣旨と改正ポイントは、以下の通りです。
SIMロック解除の円滑な実施に関するガイドライン
- 趣旨:SIMロック解除の円滑な実施に向けて策定されたガイドライン。
- 改正のポイント
(1)端末購入からSIMロック解除が可能になるまでの期間の短縮。割賦払いの場合は100日程度以下(※これまでは180日のため、80日程度短くなった)。2017年8月1日から適用
(2)端末購入からSIMロック解除が可能となるまでの期間の短縮。一括払いの場合は支払いを確認できるまでの期間。2017年12月1日から適用
(3)解約時に、原則としてSIMロック解除を可能にする。2017年5月1日から適用
(4)MVNO向けSIMロックの廃止。2017年8月1日以降に発売される端末から適用
スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン
- 趣旨:スマートフォンを購入する際に行われている高額な割引を是正し、適正化するために策定されたガイドライン
- 改正のポイント
(1)フィーチャーフォン(3G)からスマートフォン(LTE)への事業者間での移行を、自社内の移行と同等に促進させる。2017年2月1日から適用
(2)1カ月未満の期間限定で行う販売奨励金を合理的な額にすること。2017年2月1日から適用
(3)端末購入者に求める合理的な額の負担を明確にすること。具体的には、2年前の同型機種の下取り価格以上。2017年6月1日以降に発売される端末から適用
この指針により、
- SIMロック解除期間が短縮されたことで、今まで以上に国内外問わず他キャリアのSIMや格安SIMが使いやすくなる
- 実質0円がなくなるため、消費者にとって通信料金や端末代金の負担が増えたように感じる
- 過度なインセンティブや実質0円がなくなるため、新規契約やMNP契約が減る
などのプラスマイナスの影響が出るといわれています。
そんな中、「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」は、中古携帯業界にどんな影響を及ぼすのでしょうか?
関連記事
- 日本の中古iPhoneが海外へ転売されている? 実態を見てきた
大手キャリアが下取りしたiPhoneが海外に流れているのではないか? ということがウワサされています。その実態を確かめるために、香港と深センへ渡りました。いくつかのショップを見て回ったところ……。 - 中古でもiPhoneが人気の理由
日本は、いまやスマホユーザーの5割以上がiPhoneという「iPhone全盛時代」の真っただ中。そんなiPhoneは、中古市場でも人気です。その秘密に迫ります。 - SIMロックの解除期間が短縮 一括は「支払い確認後」、割賦は「約100日以下」に
総務省が「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を策定。SIMロック解除の期間を、現在の180日から改正。スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドラインも改正した。 - 端末購入補助とSIMロック解除のルールが変わる――総務省に聞く“新ガイドライン”の狙い
端末購入補助とSIMロック解除のガイドラインが1月10日に改正された。新ガイドラインはどのような目的で策定され、また今回の改正にはどのような意図があるのか。総務省の担当者を直撃した。 - 公正取引委員会、スマホ販売手法の是正を求める報告書を発表
公正取引委員会は「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を発表。MVNOの新規参入の促進の観点を中心に独占禁止法などに触れる可能性を指摘し、販売手法の是正を求めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.