ドコモが扱う「TONE for iPhone」の狙い 料金は約50%値下げ、課題はAndroid端末:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモの「エコノミーMVNO」に、フリービットグループのトーンモバイルが加わる。ドコモ向けの専用プランを用意して、既存の「TONE SIM(for iPhone)」よりも値下げをした。ドコモにとっても、キッズ向けのサービスを拡充できるというメリットがある。
ドコモにとっても補完的なサービスに、課題は独自モデルのAndroidの扱い
ドコモにとって、トーンモバイルを招き入れるメリットも明確だ。ドコモは子ども向けの端末として「キッズケータイ」を販売しており、付随するサービスとして「イマドコサーチ」を用意しているが、このモデルはあくまで小学生ぐらいまでの子どもがターゲット。TONE for docomoのように、スマートフォンを使うティーンエージャー用の端末やサービスは限定的だ。TONE for docomoがなければ、この年齢層のユーザーを取りこぼすリスクがある。
トーンモバイルは全年齢をターゲットにしたMVNOではないため、親の保護が必要ない年齢になったとき、ドコモ本体に戻ってくることも期待できる。家族がドコモのユーザーであれば、その確率はさらに高くなりそうだ。ドコモを契約している親が訪れる可能性の高いドコモショップでTONE for docomoを販売するのは、非常に合理的といえる。TONE for docomoが料金プランを絞り込んでいることもあり、同じエコノミーMVNOでもOCN モバイル ONEよりシナジー効果は分かりやすい。
その意味で、2社の関係は相互補完的だ。トーンモバイル側は販売拠点やサポート、端末が手に入る一方で、ドコモは間接的ながらも、手薄になっていたティーンエージャー向けのサービスをラインアップに加えられる。TONE for docomoのユーザーが増えれば、フリービットはより多くの帯域を必要とするようになるため、ドコモが得られる接続料の額も上がっていくはずだ。さらに、iPhoneの販売収入も期待できる。
課題は、iPhoneしかターゲットになっていないことだ。子どもからの人気が高いiPhoneだが、ハイエンドモデルで価格も高く、家庭の経済的な負担が大きくなる。トーンモバイルでは比較的安価なAndroidの端末を販売しているが、これは、同社のオリジナルモデル。見守りサービスを搭載するため、ソフトウェアの深い部分にまで手を入れているのが独自開発の理由だ。端末と通信を融合させ、垂直統合的にサービスを提供しているのがトーンモバイルの特徴だが、裏を返すと、提供できる端末が限られてしまう点がデメリットになる。
トーンモバイルは、独自のAndroid端末を販売して、垂直統合的にサービスを提供している。これは、ソフトウェアの深い部分までカスタマイズするためだ。エコノミーMVNOではこうした端末を提供できず、iPhone限定のサービスとしてスタートした
TONE for docomoがiPhone限定のサービスで始まったのも、このような事情が関係している。エコノミーMVNOは、あくまで回線や回線にひも付くサービスを販売する取り組みで、トーンモバイルの独自端末をドコモショップで販売できないからだ。石田氏も、「(同社のサービスをAndroid上で実現するには)やはりハードウェアから作らないといけない」と語る。ドコモの提供するAndroidスマートフォン上では、思い描くサービスが提供できないというわけだ。
「Androidの方も多くいるため、こういった方々にリーチできる形はないかドコモと取り組んでいきたい」(同)というものの、ドコモショップで独自端末を販売できない以上、トーンモバイル側が取れる選択肢は少なくなる。サポート体制も含め、ドコモ以外のMVNOが販売する端末をどう扱っていくかは、エコノミーMVNOの今後の課題になりそうだ。
関連記事
- 月額1100円で“動画以外使い放題” トーンモバイルが「ドコモのエコノミーMVNO」向けプラン発表
トーンモバイルは、「ドコモのエコノミーMVNO」として提供する料金プラン「トーンモバイル for docomo」の新料金プラン「TONE for iPhone」を発表した。塾に通い始める小学校高学年から、中学生、高校生を主な対象としたプラン。月額1100円(税込み、以下同)という低価格な料金で「動画以外使い放題」をうたう。【更新】 - ドコモの「エコノミーMVNO」で“弱点”解消なるか 対サブブランドでは収益性が課題
ドコモが2020年12月のahamo発表時にコンセプトを披露していた「エコノミーMVNO」の詳細が決まった。ドコモ自身が提供する料金プランではないが、あたかもドコモ内の料金プランかのように契約できる。ドコモの料金カテゴリーとはいえ、実態としてはユーザーを自らMVNOに送り出しているため、収益性が課題となる。 - NTTドコモに聞く「エコノミーMVNO」の勝算 収益性や参画のハードルはどう見る?
NTTドコモの「エコノミーMVNO」が始動し、10月からはNTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEが、ドコモショップでの契約に対応。12月にはフリービットグループのトーンモバイルも、「トーンモバイル for docomo」の提供を開始する。そんなエコノミーMVNOの狙いをドコモに聞いた。 - OCN モバイル ONEがドコモの「エコノミーMVNO」に参入し、500MBプランを提供する狙いは?
10月21日に、ドコモの「エコノミーMVNO」がスタートし、第1弾としてOCN モバイル ONEが参入した。550円で500MBのデータ通信と10分通話無料が付く新プランも提供開始した。MVNOではシェア2位のOCN モバイル ONEが、なぜエコノミーMVNOに参入したのか。 - “低廉な料金と多様なニーズ”に対応 ドコモ「エコノミーMVNO」の狙い
NTTドコモが10月7日、dアカウントやdポイントを活用した「エコノミーMVNO」について発表した。エコノミーMVNOは、低容量かつ低廉な料金サービスを利用したいユーザーのニーズに応えたもの。ドコモから移行したとしても、dアカウントを軸とした非通信分野での収益向上を図るという狙いもある。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.