「iPhoneは異常な状態が続いている」が、中古スマホが“過去最高”に好調の理由(3/3 ページ)
総務省がアクション・プランで後押ししたこともあり、スマートフォンの中古市場が右肩上がりで成長している。ニューズドテック(旧携帯市場)もその1社で、2021年12月に中古スマートフォンの販売台数で過去最高を記録した。一方でiPhoneは異常な状態が続いているという。
中古スマホの単価は3000円〜4000円ほど下がっている
―― iPhoneは1万円台のものが売れるというお話がありましたが、Androidはどのぐらいのものが売れているのでしょうか。
粟津氏 iPhoneは1万円台後半から2万円台までですが、Androidはもうちょっと下がって1万円台前半ぐらいです。Galaxyになるともうちょっと高くなりますが、平均的にはそんな感じですね。
―― 新品で言えば、ミドルレンジモデルより安いぐらいですね。
粟津氏 その通りです。
―― 携帯市場として、21年12月に過去最高の販売数になったというリリースが出ていましたが、この要因をどう見ているのかを教えてください。
粟津氏 先ほどお話ししたように、中古の価格メリットが出たのが大きいですが、社内の話で言えば、検索のしやすさやWebマーケティングを徹底したこともあり、今までリーチできていなかった顧客にリーチできたということがあります。インターネットで検索する人が増え、問い合わせも増加しました。
―― 単価に関しては売れ行きと連動しているのでしょうか。
粟津氏 下がっていますね。1年ぐらい前と比べると、3000円か4000円は落ちています。数は増えているのですが……。
バッテリーへの関心は以前より増えている
―― 中古に対する抵抗感があるというお話があり、リユースモバイル・ジャパンがそれを解消するための認証制度を開始したという流れだったと思います。ちょっと漠然とした質問かもしれませんが、そういった抵抗感のようなものは和らいでいるとお考えでしょうか。
粟津氏 むしろ、バッテリーに関しては以前よりも増えていると思います。17年ごろよりスマートフォンをさらに使うようになったことが1つで、ながら充電の問題もありますが、バッテリーの持ちはみなさん非常に気にされるようになりました。これは需要が上がったことの裏返しでもあります。
中古の品質や、中古のイメージ全体がそれほど下がっているわけではないので、まだまだ僕たちの努力が足りない部分です。ガイドラインや認証制度をもっとアピールしていかなければいけないと考えています。ちなみに、リユースモバイル・ジャパンの認証制度は通常のものの他に、バッテリーに特化したものがあります。両方取っているのは3社になります。
課題はiPhoneの流通量とネットワーク利用制限
―― リユースモバイル・ジャパン発足時には、iPhoneがなかなか中古業者に回ってこないという課題も挙げられていたと思います。その状況は改善されましたか。
粟津氏 改善されてないですね。むしろ悪化している印象もあります。ただ、仲介業者も商売なので、高く買ってくれるところに売るのは制限できません。これは致し方がないですね。販売力をつけ、高い金額で買うことしかないと思います。
―― 新しいiPhoneが少ないのは、それも要因なのでしょうか。
粟津氏 それもあると思います。まず、ロットが僕らの仕入れられるような単位ではない。10万台、20万台となってしまうと、買うことができません。リユースモバイル・ジャパンみんなで買うということはできるかもしれませんが、それをやるとみんなが同じところ(楽天やYahoo!JAPANなどのEコマースサイト)に出品してしまい、一気に価格が下がってしまいます。
―― リユースモバイル・ジャパンが発足して間もなく5年ですが、現時点で政策的、制度的な課題は何か残っているとお考えでしょうか。
粟津氏 認証制度が立ち上がり、政策的に何かしなければいけないということはほぼなくなりました。業界的に見ても、ボトルネックになっているのはネットワーク利用制限ぐらいです。端末と回線が分離され、端末をどこで買ってもよくなり、SIMカードとセットで販売するという建前がなくなりました。そのため、(キャリアが)ネットワーク利用制限をかける必然性もなくなってきています。
△(端末の残債が残っているなど、将来的に×になる可能性があるときのマーク)がなくなり、○と×の2つになれば、もう少しよくなると思います。そこが大きなボトルネックです。ただ、それ以外はそれぞれの事業者が努力するところで、何か大きな問題が起きれば(リユースモバイル・ジャパンの)ガイドラインに入れていこうと考えています。
取材を終えて:キャリアの施策が与える影響は注視する必要あり
端末購入を伴わないオンライン専用プランの普及は、中古スマートフォン市場にとっても追い風になっていたようだ。一方で、売れ筋端末の偏りは気になるところ。特にiPhoneは、最新モデルが供給不足になっていることもあり、過去のモデルに人気が集中しているようだ。iOSはAndroidと比べて比較的サポート期間が長いが、iPhone 7は発売から5年半が経過した。今後、徐々に新しいモデルへ調達をシフトさせていけるかは課題だと感じた。
Androidに関しては、対応周波数の違いをどう説明するのかが今後の課題になりそうだ。特にキャリアモデルの場合、同一名称の端末でも利用できる周波数に大きな違いがあることが多い。中古端末の信頼感を高める上でも、対応バンドの表示をするなど、何らかの対応が求められるようになる可能性はある。
粟津氏によると、現時点ではアップグレードプログラムの影響は軽微だというが、最大手のドコモがこの仕組みを導入してからまだ間もない。KDDIが残価設定型に切り替えたのも、2020年のこと。中古端末市場にどのような影響が出てくるかは、今後も注視していく必要がありそうだ。
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