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KDDIは通信障害をどのように検知してインフラを守っているのか ネットワークセンターに潜入(2/3 ページ)

KDDIは7月23日、東京・多摩市にある通信ネットワークの設備を公開した。名称は「多摩第5ネットワークセンター(多摩第5NC)」で、常にネットワークを監視・運用する。当日、説明されたことをまとめてお伝えする。

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自然災害で苦労すること 事業者間の連携強化で早期復旧を目指す

 また、近年は自然災害による通信設備への影響が「長期化する傾向にある」(コア技術統括本部 エンジニアリング推進本部 ネットワーク強靭化推進室長 大石忠央氏)ため、大規模自然災害に備えた取り組みの重要性も増している。

 こうした地震や台風では土砂災害や電柱倒壊により電源が確保できなくなり、光回線も切断されてしまう。そのため、暫定的な処置として、ポータブル発電機や電源車を現地へ搬送し、基地局に電源供給を行うことでサービスを復旧させる。他に、車載型基地局や可搬型基地局、衛生回線を利用した復旧方法もある。

KDDI ネットワーク設備 通信障害 災害対策
コア技術統括本部 エンジニアリング推進本部 ネットワーク強靭化推進室長 大石忠央氏は、災害対策から早期復旧までの取り組みや苦労を明かした
KDDI ネットワーク設備 通信障害 災害対策
災害時や大型のイベントで活躍する車載型基地局
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車の上に搭載したアンテナの向きや高さなどをリモコンで調整できるようになっている

 災害時におけるサービスの早期復旧に向けては、万が一中継伝送路の1つが被災しても、他のルートへ切り替えることで、通信サービスを提供できるようにしている。首都直下型地震の対策としては、広い範囲を丸ごとカバーできる「大ゾーン基地局」を設置してサービス提供の継続を可能にしている。

KDDI ネットワーク設備 通信障害 災害対策
KDDIは基幹ネットワークのルート化や、大ゾーン基地局などを活用し、災害時においても通信サービスを使えるようにしている

 記憶に新しい大規模災害といえば、2024年1月1日に石川県能登半島を襲った地震だ。崩落や土砂崩れで道路が使えなかった他、渋滞発生により必要な機材の運搬に「時間を要した」(大石氏)。能登半島地震では現場環境の変化が激しい中、現地の安全を確保しながら作業に当たることも急務となった。ベースキャンプ車両を派遣して、作業員が宿泊できるようにした。

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1月1日に石川県能登半島を襲った地震。最大震度は7と大型の地震となった
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災害時には土砂崩れなどにより道路が使えなくなってしまう
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交通規制や車両の集中で交通渋滞が発生することもあり得る。そのため、車載型基地局ではまかない切れないのだ

 KDDIは災害時にも、数千機の低軌道周回衛星で地上にブロードバンド接続を提供する「Starlink」を活用している。光回線をバックホールとWi-Fiとして活用。auサービスは移動基地局、Starlink、発電機などを利用し、「1日最大500人体制でエリア支障を順次解消」(大石氏)した。Starlinkは2023年に導入したため、活用の経験メンバーが少なく、能登半島地震では「100人ほどを育成」(大石氏)しながら復旧作業を行わなければならなかった。

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「Starlink」は災害時における活用事例が増えていきそうだ
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能登半島地震の際は「車載型基地局に積もった雪を除雪し、平らにして衛生アンテナを設置した」(大石氏)そうだ
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災害時に役立つ通信衛星機器やStarlinkアンテナ、GPSアンテナ。これらを含む可搬型基地局は車に積載して移動させる

NTTから「一緒に船上基地局を運搬しないか」との連絡が

 自治体や自衛隊、通信事業者との連携も復旧に向けた取り組みの1つで、能登半島地震では船上基地局が活躍した。「NTTから連絡があり一緒に船上基地局を運搬しないか、という提案を受けた」(大石氏)KDDIは、船上基地局をNTTと一緒に運搬することを決めた。「ドコモはKDDIを温かく迎え入れた。船酔いしながら滑りやすい機材をベルトで固定し運搬した」(大石氏)

 船上で活躍したStarlinkは避難場に350台を無償で提供。大石氏は「使える状態にして金沢へ発送した。1つ1つを荷下ろしして、3〜4時間かけて運んだ」と当時の苦労を明かす。だが、孤立集落にてStarlink Wi-Fiが活用できたことで、孤立集落に避難生活をしていた人は、スマートフォンでビデオ通話を行えた。運搬時の苦労が実を結んだ。

KDDI ネットワーク設備 通信障害 災害対策
KDDIはStarlink Wi-Fi 350台を避難所に無償で提供。一時的に使えなくなったモバイル回線の代替えとなった

 大石氏は災害時の復旧について、「競争ではなく協調領域である」と言い表しており、船上基地局の共同運用だけでなく、車載・可搬型基地局の燃料を給油する際も相互に連携を図るとしている。日頃はライバルである事業者間の連携が強化されることで、サービスの早期復旧が期待できる。

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災害時の復旧においては日頃、ライバルとなる通信キャリア各社が手を取り合う事例が増えそうだ

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