News:アンカーデスク | 2003年3月10日 04:18 PM 更新 |
もちろんそうすることで、使用料が払えないところは潰れて借金を背負い、払えるところはそのまま生き残っている。このやり方は一見自由だが、同時に非常にシビアだ。しかし彼らは、そういったやり方に慣れている。
一方、韓国では、放送目的で作ったものはどういう手段で流そうと放送権で処理、という方法を現在は採っている。現在は、ということは、将来的に国際的な規定が決まればそれに準じるが、今のところ市場の形成を優先しているということである。
つまりこれは、インターネットを利用するVODでは国をまたいでシステムが存在する可能性があることを視野に入れながらも、とりあえず前進できる解釈である。
米・韓国とも、「後で金払えばいいんだろ」というビジネスチャンス中心主義でVODはスタートしたと言える。しかし景気低迷からの出口が見つからない日本においては、このような後出しジャンケンみたいなやり方は馴染まない。日本人の感性から考えれば、「最初から言ってくれればやらなかったのに」ということになるからだ。
ならばコンテンツホルダーと通信事業者の間で、前もって取り決めをしようじゃないか、という動きも当然ある。だが放送と違ってVODでは、どのぐらいの市場規模になるのか、全く手がかりがない。ゲリラ的にでも始まっていればまだ規模が分かるのだが、それすら始まっていない日本では、使用料を決めようにもその材料すらない。だから、交渉はちっとも進まない。
それどころか最近では「WinMX」や「Winny」といったP2Pファイル交換ソフトによって、ビジネスが立ち上がる前に、市場そのものが地下に潜ってしまっている。権利に関して慎重になりすぎる日本ならではの損失と言えるだろう。
ビジネスの形
日本は著作権に関して欧米に遅れている、などと言う人もいる。まあ大抵こういう話を持ち出す人に限って認識が遅れているものだが、この意見は半分間違っており、半分正しい。
権利の保護や遵守に関して、日本ほどバカ正直に対応している国はない。その点のクリアさにかけては、先進国でもトップクラスだろう。しかしその半面、新しいメディアやコンテンツに対しての柔軟性にひどく欠ける。
これはコンテンツホルダー側の考え方に問題がある。とかく不正利用を規制する、すなわち勝手に使わせないようにする目的ばかりが先行し、それが結果的に自分のマーケットを狭めていることをはっきり認識すべきだ。
コピーコントロールCDがいい例で、筆者はいくらこれをやったからといって、CDの売り上げが復活するとは全然思っていない。筆者もこうしてモノを書いて暮らしているので、一応コンテンツクリエイターの端くれだが、あのやり方は「トイレの水を無駄に流すから、川をせき止めちゃいました」というのに匹敵するほど、近来希に見る愚策だと思っている。
著作権ビジネスは、どんどん流通してもらって、流通した人から大いにお金を払ってもらわなければ成立しない。地下流通を日の当たるところに引き上げ、コンテンツを流してお金を取るビジネスに転換していかなければ、このデジタルコピー時代に物理的なモノを売るだけでは、たかがしれていると思わないか?
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
[小寺信良, ITmedia]
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