ネット時代の新潮流――CGMとは(4)
「のまネコ」「やわらか戦車」に見るCGMビジネスのリスクとチャンス(1/2 ページ)
前回は、CGM(Consumer Generated Media:消費者が生成するメディア)の情報が将来、マスメディアと並ぶほどの影響力を持ち、メディアビジネスの形を変える可能性があると述べました。
CGMはメディアビジネスだけでなく、コンテンツビジネスでも新しい道筋を示す可能性を持っています。CGMからメジャーコンテンツが生まれ、ビジネスとして大きく成長するということも十分に考えられるでしょう。
玉石混交のCGMからメジャーコンテンツが誕生すると連想するのは、なかなか難しいかもしれません。私自身、CGMプラットフォームの1つである2ちゃんねる(2ch)から「電車男」や「のまネコ」などのメジャーコンテンツが出現し始めたころは、単なる偶然ではないかと思っていました。
しかし今振り返ってみると、これらはWeb2.0的な流れに乗ったことで、CGMでありながらメジャー化していったのだと理解できます。
Web2.0とメジャー化の力
電車男やのまネコなど、CGMで生まれた映像、音楽、アニメ、小説などのコンテンツがメジャー化する(既存の大規模な流通システムに載せられる)ことが珍しくなくなってきています。今後、Web2.0の潮流が広がっていく過程で、CGMの中からメジャーコンテンツが生まれていくことは、偶然ではなく必然となるでしょう。
CGMをメジャーコンテンツ化させる過程で働くWeb2.0的な動きとして、以下の3つが挙げられます。
1 マッシュアップと予定調和
あるコンテンツに対して複数の人が、双方向で意見を述べる、または手を加えることで、そのコンテンツの面白さが増していきます。また、みんなの意見が加わることで、みんなが望む予定調和的なコンテンツとなり、魅力がさらに増します。
2 整理され、まとめられている
前回でも述べたように、CGMの玉石混交から“玉”を選んで整理する作業を個人が行い、それによって一番良い編集、あるいは一番良い形に整理され、まとめられます。それに対して前項のマッシュアップの作用が働き、面白さが増していくサイクルにつながります。
3 人気コンテンツが自動的に選別される
1や2の過程で口コミが発生し、コンテンツが伝達されていきます。その結果、人気のあるコンテンツは自動的に浮かび上がり、そうでないものは人目に付きにくいという、コンテンツの自動的な選別が起きます。
――これらは、Web2.0型メディアの特徴(連載第2回参照)と共通する部分も多くあります。ユーザーが発信した情報がメディアとなるのかコンテンツとなるのかは、CGMプラットフォームの方向性によって変わると考えられます。
3つの特徴を、電車男やのまネコに当てはめてみましょう。
電車男は、ある人が立てたスレッドに対して、複数の人がコンテンツを投稿することで、ストーリーの基礎が形成されました(CGMのマッシュアップ)。これと並行して、2chというCGMプラットフォームが持つ双方向性により、みんなが期待する予定調和的なコンテンツができあがっていったと考えられます。
例えば、スレッドを立てた主人公がある投稿をします。これに対して他の人は「こうすればいいのに」という意見を投稿します。それにこたえる形で主人公が行動し、投稿します。このやり取りが繰り返されていくことで、みんなが面白いと感じる予定調和が働きます。
ただ、元のスレッドは数が多く、無駄な投稿も多いため、これらを見やすく編集する人――いわゆる「まとめサイトの中の人」が現れました。その人によってCGMが整理してまとめられた結果、人気が爆発し、口コミで認知が広がり、メジャーコンテンツの作成者も知るところとなり、書籍、映画、ドラマなどのメジャーコンテンツとなったわけです。
のまネコの場合は以下のような流れと考えられます。まず、2chやその前身の「あめぞう」などで、ネコ型のアスキーアートが誕生しました。それに複数の人が手を加えたり、せりふやストーリー的な要素を加えることで表現力が増し、より面白いものに進化しました(CGMのマッシュアップ)。
その後もユーザーが手を加えたり、良いものを選別し、再利用していくことで、標準的な書き方が決まりました。また、ユーザーが名前を付けることで、モナーやギコ猫といったキャラクターとして成立しました(CGMが整理してまとめられる)。
さらにこれを2chユーザーが頻繁に使うようになったことで、認知が口コミ的に広がり、これらを使ったFlashアニメが誕生するなど、新たなコンテンツに発展しました。これがのまネコの誕生につながっています。
のまネコは、メジャーなキャラクターとして一般に認知されましたが、メジャー化する過程で騒動がありました。この騒動を振り返ると、CGMから生まれるコンテンツを取り扱うリスクとチャンスが浮かび上がってきます。
のまネコに見る、リスクとチャンス
のまネコはそもそも、ある2chユーザーが、モナーによく似たキャラクターを使って、ある楽曲に合わせたFlashアニメを作成し、ネットで公開したところ、「面白い」と大きな反響を呼んだことが始まりです。
これに目をつけたレコード会社が、Flashアニメに登場するキャラクターに「のまネコ」と名付け、その楽曲を収録したCDにFlashアニメを収録し、キャラクターグッズを販売しました。
その結果、のまネコはメジャーになり、曲もヒットしました。しかし、2chユーザーは自分達が育てた(マッシュアップした)「モナー」に似たキャラクターを、レコード会社が独占的に利用し利益を得ようとしたと怒り、レコード会社に大量のクレームが寄せられました(関連記事参照)。
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