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CGMと既存メディアの“マッシュアップ”ネット時代の新潮流――CGMとは(2)(2/3 ページ)

» 2006年08月01日 11時00分 公開
[伊地知晋一,ITmedia]

 また、CGMを媒体とする広告商品の代表的なものにGoogle AdSenseがあります。これはブログや個人のホームページなどのCGMに、その文中と連動した広告を表示するものです。

 低予算でも出稿でき、広告がクリックされた分しか請求されないクリック補償型であるため、ブランドにそれほど影響されない商品を、ネットを通じて直接顧客を獲得したいと考えている企業にとって効率のいい広告商品で、出稿しているのは中小企業が大半です。

 しかし、大手広告代理店は、売上の大半を、広告予算が大きい、1.0型メディアへのブランディング広告の出稿で占めており、Google AdSenseのような、ナショナルクライアントが出稿しにくく単価も小さい、CGMを中心としたWeb2.0型メディアを積極的に取り扱う理由がありません。また、従来から取り扱っているテレビなどの既存メディアの延長線上でマーケティングプランが立てられる1.0型メディアの方が、分かりやすく取り扱いやすい、という背景もあります。

 これらの理由から、1.0型メディアは当面健在であり、それらのメディア運営企業が急激にWeb2.0型メディアにシフトする必要性はあまりないと言えます。

Web2.0型メディア、3つの特徴

 CGMを中心とするWeb2.0型メディアでは、双方向性を生かしたユーザー間での情報やりとりがあり、それには3つの特徴があると考えられます。

(1)引用(パーマネントリンク)

 編集された情報からCGMまで、ネット上で発信される情報を引用することで、新たなCGMが発生することがよくあります。元の情報にハイパーリンク(トラックバックもその1つ)による引用が増えることでGoogleのページランクが上昇し、その情報がより多く見られやすくなる傾向があります。

 このような現象に貢献しているのが「パーマネントリンク」(パーマリンク)です。これは1つの情報(ブログならば1回の投稿)に対して、個別のURLが発行されるという単純なものなのですが、ブログの登場と共に頻繁に使われるようになりました。パーマリンクの登場により、情報の引用が活発になったと言えます。

 分かりやすい例えをしましょう。ある人(情報)に会いたいと思って住所(URL)を訪ねました。しかしすでに引っ越しており空き家(not found)となっていました。それに対してパーマリンクは、人(情報)に付いてまわる住所(URL)なので、会いたい人(情報)がどこに引っ越しても、一度住所(URL)を把握しておけば会いに行くことができるのです。

(2)協調(マッシュアップ)

 CGMにおける協調(マッシュアップ)とは、元となる情報に対して、複数の消費者が、レビュー(コメント)やトラックバックなどのCGMが加えることで、元の情報の価値が向上する過程を指します。また、これらによって発生したCGMが1つのテーマに沿いながら集積するこで、より価値の高いメディアとなります。

 例えば、Amazonで販売されている個々の本の紹介ページに消費者からのレビューが加わることで、その本を紹介するための情報の価値が向上することや、Googleマップ上に情報を書き込むことで地図の価値が向上するのもこれと同じ意味です。

 このように元の情報にCGMが積み重ねることで、元の情報の価値が向上する現象を協調(マッシュアップ)と呼ぶことがあります。

(3)伝達(口コミ)による速報性

 Web2.0型メディアは、情報を引用しやすいインタフェースを持っているために、短時間でぼう大な数の情報が、ブログやSNSを通じた口コミにより伝達されることがあります。

 最近では、お笑いコンビ「極楽とんぼ」に関する事件の話題に関する情報が、ブログや2ちゃんねるといったCGMで、非常に速い速度で広範囲に伝わった例がありました。さらにこの事件では、YouTubeに掲載された事件に関する映像のパーマリンクが増殖したCGMの中で引用されており、その映像の再生回数は12時間で120万回以上に上ったそうです(関連記事参照)。

 このようにCGMの消費者間による伝達では、トラックバックやパーマリンクにより簡単になり、マッシュアップにより増幅され、瞬く間に広い範囲に伝達される、ということが起きるのです。

CGM時代に重要性増す1.0型メディア

 CGMを中心としたWeb2.0型メディアが繁栄したからといって、既存メディアのビジネスモデルである、取材し情報を集め、編集したコンテンツを一方的に配信する1.0型メディアがなくなるわけではありません。逆に、CGMを増やすためには、1.0型メディアが提供するコンテンツが重要な役割を果たしており、良好な関係を持って共存する可能性も秘めています。

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