見えてきた「ワイヤレスHDMI」の姿(2/2 ページ)
UWBは3.1GHzから10.6GHzまでの幅広い周波数帯を想定しているが、その中には既存の無線システムが使用している帯域もあり、国や地域によって使える周波数は異なる。日本の場合は3.4G~4.8GHzおよび7.25G~10.25GHz。このうちTzeroのワイヤレス技術では、“Lower Band”と呼ばれる低い周波数帯(3.1GHz~4.48GHz)の一部を使用する。
また、2つのアンテナを使うUltra MIMO(MIMO:Multiple Input Multiple Output)も特徴の1つ。ラジブ氏は、UltraMIMOの採用が技術的なブレークスルーになったと話す。「Ultra MIMOにより、伝送距離、スピード、そしてリンクの信頼性が向上し、“壁越し”の通信も可能になった。またリピーター(中継器)にも対応しており、これを利用すれば伝送距離を40メートル程度まで延ばすことができる」。
HDMIのCEC(Consumer Electronics Control)もサポートした。つまり映像や音声と一緒にレコーダーやプレーヤーのコントロール信号をワイヤレス伝送可能。周知の通り、CECはパナソニックの「VIERAリンク」やシャープの「AQUOSファミリンク」で採用されているため、たとえば「AQUOS」と「AQUOSレコーダー」をワイヤレスHDMI経由で接続すれば、別の部屋にあるレコーダーをテレビ側からコントロールできる可能性がある(ただし未検証)。「最近は日本のAV機器メーカーもCECに積極的だと聞いているが、仕様が共通化されて多くのメーカー間で相互に利用できるようになることを期待している」(ラジブ氏)。
デモは、ガラスの壁を挟んだ一方の部屋にパナソニックのBlu-rayレコーダーと送信機、もう一方にシャープの液晶テレビと受信機を設置して行った。映像はBlu-ray Discに記録したフルハイビジョン映像。JPEG2000への変換が画質に与える影響が気になるところだが、デモ映像を見る限り、劣化した印象は受けなかった。流れる川のように動きのあるシーンでもノイズの発生などは見受けられず、通常のケーブル接続と比較しても、なんら遜色のない画質といえる。
ラジブ氏によると、パケットエラー率は有線LANと同レベルの10のマイナス8乗(1億分の1)。これは「2時間に1回パケットロスが起きるかどうか」という水準で、レイテンシ(遅延)も10ミリ秒以下に抑えているという。ただし、レイテンシに関しては、テレビやプレーヤーのほうがボトルネックになる可能性があると指摘する。
「現状では、ワイヤレスの部分よりもシステムとしての内部処理性能が問題だ。ビデオゲームのようにリアルタイム性を求められる映像や、テレビのチャンネル切替時には遅延を感じるかもしれない」(同氏)。
さて、ユーザーとして気になるのはワイヤレスHDMI対応製品の登場時期と価格だろう。発売時期については、ASUSTekが年内にも送信機と受信機をセットにした“ワイヤレスHDMIボックス”を出荷する計画だ。「出荷時期はセットメーカー次第だが、われわれは数カ月以内にこうしたボックスタイプの製品が店頭に並ぶと予想している」。
さらに、年末にはワイヤレスHDMI内蔵のテレビやプレーヤーが登場し、より手軽に利用できるようになるという。ただし、これはメーカー側が同社の技術を採用することが大前提。現在のところ国内大手メーカーによる採用実績はないが、ラジブ氏は「日本のメーカーとは、テレビの“ハイクオリティ化”という点で合致している。われわれにとっては最も大事にしたいマーケットだ」と日本市場の重要性を強調し、強力にプッシュしていく意志を示している。
一方にコスト面に関しては、ラジブ氏は明言を避けた。ボックスタイプについては「少なくとも、40メートルのHDMIケーブルに比べれば、よっぽど安い」。またテレビなどに内蔵する場合は、「利便性を考慮すれば、システム価格の10%アップ程度までなら消費者に受け入れられると考えている」とするに止めた。
薄型テレビの値下げ圧力の強い日本市場において、HDMIのワイヤレス化に対してセットメーカーがどの程度のコストアップを許容するかは未知数だ。しかし、少なくともワイヤレスHDMIを実用化する準備が整ったことは事実であり、年内に対応機器が登場する可能性も高い。フロントプロジェクターや“壁掛けテレビ”ユーザーにとっては、目の離せない一年になりそうだ。
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