裸の男子の汗をふき、「ヘブン顔」を勝ち取れ――バンダイナムコ「乙女ゲー」開発秘話(1/2 ページ)
「裸の男子の汗を、タッチペンで優しくふき取る」「シャワーを浴びる男子に息をふきかけ、湯気を飛ばす」――そんなゲームが登場する。バンダイナムコゲームスが満を持して投入する初のオリジナル乙女ゲーム。ニンテンドーDS用「DUEL LOVE 恋する乙女は勝利の女神」だ。
乙女ゲームは、プレイヤーが男性キャラクターと恋愛するゲームの総称で、市場は年々拡大しているといわれている。中でも「遙(はる)かなる時空(とき)の中で」「アンジェリーク」シリーズを展開するコーエーや、「ときめきメモリアル Girl's side」シリーズのコナミなどが有力メーカー。バンダイナムコがオリジナルタイトルで進出するのは初めてだ。
開発した20代の女性社員は言う。男性から何度も、同じ質問を受けたと。「これ……面白いの?」
度肝を抜いた「汗ふきゲーム」
DUEL LOVEは、汗と涙と恋と、そしてたくさんの萌え要素が含まれた、熱い恋愛アドベンチャーゲームだ。高校生女子の主人公(プレイヤー)が、格闘技をたしなむ男子たちの「セコンド」になり、彼らを応援していく。
挿入されているミニゲームが、昨年の「東京ゲームショウ」でも話題をさらった。プレイヤーがタッチペンを使って男子の汗を拭いてあげるというゲーム。今までになかった乙女要素を散りばめたことが、来場者の度肝を抜いたのである。
男性読者にとっては、このゲームの魅力は不可解極まりないことだろう。実際このゲームは、誕生するまでに何度も男性から同じ質問を受けていた。「これ……面白いの?」
参加者は、言葉を失った。
同社CSカンパニーの岡香織さん。バンダイ(当時)に入社したのは6年前だ。当時から家庭用ゲーム開発を志望し、週刊少年ジャンプの漫画をベースにした「銀魂 銀さんと一緒! ボクのかぶき町日記」(プレイステーション 2)などのソフトの開発に携わってきた。
同社には女性開発者は少なく、岡さんは「いつか女性に遊んでもらえるゲームが作れたら」とひそかな野望を抱いていたという。大の少年マンガファンでライトな腐女子でもある岡さん。「そんなゲームを作れたら、ついでに自分も遊びたいなって思ってたんですよね」
転機は突然やってきた。入社3年目。企画の新人によるプレゼン会が開かれることになったのだ。女性開発者は岡さんのみ。彼女は思った。乙女ゲームには市場が必ずある。ここでみんなに注目してもらいたい――
岡さんは「DUEL LOVE」の原型となる企画案を発表する。PS2向け乙女ゲームで、内容は学園モノだが、当時「K-1」などがブームだったこともあり、「男同士を戦わせてみよう」と格闘ゲームの要素も盛り込んだ。キャラクターは「オリジナルでやる」と言い切った。
しかし、プレゼン会場の参加者たちは皆、言葉を失った。
同社の企画は既成キャラクターを使うゲームが多く、その中であえてオリジナルを出したことも珍しかったのだが、そもそも乙女ゲームはバンダイが手がけたことのないジャンル。マーケットが読めなかった。
さらにはその場にいたのが男性ばかりで、何が女性に受けるのかも分からない状況。「この子は何を言ってるんだろう、という扱いでしたね」と岡さんは苦笑する。
結局その場で判断できず、もう一度プレゼンの場が与えられることになり、3カ月後に試作を披露することに。3カ月間で企画を練り直し、さらに目を引く機能を試作して、提案しなくてはならなくなった。
「……もう、好きにやってみればいいじゃない」
3カ月間の試行錯誤の中で、ハードをPS2からDSに変更。まだDSが女性の間で普及していないころだったが、操作性が合っていると感じてDSを選んだ。そして、DSのタッチパネルを使って「男子の体の汗をふく」というミニゲームを試作することにした。
さらにオリジナルキャラクターを作るため、ターゲット層に近い読者を持つ白泉社に企画書を持ち込み、編集部に足しげく通って協力をお願いした。その結果、少女コミック誌「花とゆめ」で「花ざかりの君たちへ」などの作品を持つ中条比紗也さんに、キャラクターデザインを手がけてもらえると決まった。
岡さんはこうした成果をひっさげ、再プレゼンに挑んだ。
汗ふきゲームを含むそのプレゼン中。「……もう、好きにやってみればいいじゃない」と半ば力ずくだが、GOサインが出たのだった。
こうして「DUEL LOVE」は誕生することになる。
キャラに魅力がなければ、汗をふいてもつまらない
しかし岡さんは悩んだ。「市場は必ずある。だからこそ、ターゲットである女性たちに注目されるものを作らなければ」。そればかり考えていた。
ただの恋愛モノでは「また新しいものが出たな」という程度で忘れられてしまう。どうしたらよいのか。社内にノウハウがあるわけでもないため、シナリオ、キャラクター、アニメーション、機能、システムなどの構想に1年を要した。
岡さんは、キャラクターとシナリオにこだわることにした。
乙女ゲームは一般的に、システムは単純だ。しかし、そのぶん登場キャラクターとシナリオの魅力が必須。「キャラに惹きつけられるところがなければ、汗を拭いてもつまらない」というわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
6
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
7
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
8
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
9
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR