麻倉怜士のデジタル閻魔帳
放送の明日が分かる “麻倉的”NHK技研公開の展示ベスト5(後編)(3/4 ページ)
第1位:HybridCast
――いよいよ第1位です
麻倉氏:第1位は、やはりHybridCastです。現在、市場にあるスマートテレビの多くは、専用ボタンでVODで立ち上げるといった具合に放送とIP通信が完全に分かれています。そうなると、放送はテレビで視聴するコンテンツのワン・オブ・ゼム――たくさんあるコンテンツの1つにしかなりません。対してNHKのHybridCastは、放送では伝えきれない情報を提供するなど、ユーザビリティーの向上にIP通信を利用します。“放送の魅力を増す”という意図が明確なのです。
またタブレット端末やスマートフォンを使ったセカンドスクリーンの仕組みも提案しています。番組表がタブレットに届き、手元の操作ですぐにテレビ画面に映し出すことができます。それだけですと単なる多機能リモコンですが、番組の進行に合ったタイムリーな関連情報を取得できたり、番組を見ていて気になったことをネットで検索できたりもします。ただ、タブレットとテレビ画面の視線移動も煩わしいケースがあるため、HTML 5ブラウザの表現力を使って同じ情報をテレビ画面に重ねて映し出すこともできます。やはりテレビは受け身で楽しむリーンバック(後傾姿勢)のコンテンツですから、これも重要な提案だと思いました。
また、HybridCastの展示で画期的だったのは、試作機を展示したテレビメーカーが昨年の2社から5社に増えたこと。さらにWOWOWやフジテレビといった放送局も展示に参加したことです。中でもフジテレビのCM連動サービスでは、テレビCMの内容にあったアンケートやゲームがタブレットに表示されること。放送業界を挙げてこの新しいサービスに取り組もうとしていることがうかがえます。
もう1つ面白かったのは、ネット経由で取得するデータは録画機に残らないことです。生の放送とVODの見逃し視聴などには対応しますが、録画については一歩引いたスタンスですね。説明員に話を聞いていたとき、「やはり放送は生です」と言っていましたが、全録機も登場した時代に、またこの言葉が聞けるとは思いませんでした。NHKは、それだけ放送というものに対する自信があり、HybridCastの魅力を加えることで再び視聴者をリアルタイムの放送に呼び寄せたい、という意識を持っています。それをはっきりと感じました。もちろん録画に残らない点は、視聴者の利便性からみると異論もあるとは思いますが。
展示会場にはHybridCastのさまざまなデモンストレーションがあり、いずれも具体的な提案を含んでいました。放送と通信の融合、あるいは“日本型スマートテレビ”という観点から見ても、とてもユーザーフレンドリーなソリューションだと思います。また、東芝が展示した試作機は、昨年発売されたレグザ「Z3シリーズ」のハードウェアをそのまま使っているそうですから、処理能力などの技術的なハードルもさほど高くはないと予想できます。放送を楽しむための“本当のスマートテレビ”が登場するという意義も合わせ、技研公開2012の展示ランキング、ナンバーワンに推したいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
8
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
9
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
10
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR