新経済サミット2013
「エンジニア1人で世界を変えられる時代、日本からイノベーションを起こすには」 伊藤穰一氏、Rubyまつもと氏など議論(1/3 ページ)
SkypeやTwitter、Androidなど、IT業界で海外発のイノベーションが目立つ一方、日本からは、破壊的なイノベーションは生まれにくいと一般的に思われている。
その状況を変えるには何が必要か――MIT Media Lab所長の伊藤穰一氏、LINE社長の森川亮氏、グリー社長の田中良和氏、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏、GMOインターネットの熊谷正寿社長が4月16日、「新経済サミット2013」で議論。日本経済新聞社編集委員の関口和一氏が進行役を務めた。
変化の激しい現代に対応できる“変人”は、日本の「出る杭を打つ」教育では生まれないという意見や、エンジニアを大事にする必要性、政府の役割などについて議論。世界がネットでつながる現代、「本当に“日本から”イノベーションを起こす必要があるのか」という問題提起も波紋を呼んだ。議論の結果は、日本政府への提言としてまとめられ、17日、甘利明経済産業相に提出された(提言のPDF)。
ネットで世の中がカオスに ベンチャーが大成功も
伊藤氏は、インターネット前と後で、世の中のスピードと予測可能性が大きく変化したと指摘する。「ネット以前は世の中がゆっくり動いていたので、ルールを守れば大量生産型でイノベーションできた。鉄道や携帯ネットワークなど中央集権型で、お金をかけるイノベーションは日本が強い」
ネット後は、「分散・カオスで、誰でも参加できる、無秩序に近い」世界。コミュニケーションコストやIT機器のコストは下がり続け、小さな資金で作ったベンチャーでも“大当たり”が可能になった。「大企業はいかにリスクを防ぐかが大事だが、ベンチャーはいかに当てるかだ。お金がないところから、エンジニア中心でプロダクトができる」
変化が激しいネット時代。ルールや計画に従ってまじめに働く旧来型の日本企業や、“おりこうさん”を育てる日本の学校教育では、変化に対応しきれなくなってくる。「やるかやらないかを会議で議論し、考えるコストが、やるコストを上回ってしまう。パーミッションレスにしないと、破壊的なイノベーションはできない」
グリー社長の田中氏は、大学時代に起業したての三木谷浩史氏と初めて会い、起業の理由を聞いた経験を振り返る。「三木谷さんは、『日本は変わるべきで、そのためには新産業が必要。それは先生に教えてもらったり、“たられば”を考えるのではなく、社会に実例を生み出す必要がある。そのために会社をやるんだ』と言っていた。その後、会社を始め、言葉の意味を実感している」
LINEは事業計画を作らない
「LINEは事業計画を作らない」と、森川氏は打ち明ける。その理由は、「日本人は計画が好きだから」だ。
「日本人は計画が好きで、一度計画を作るとなかなか壊せず、戦略変更を時間をかけて説明しないといけない。計画を作らなければ、変えるのも簡単で、スムーズに動ける」
戦略や目標も、あえてあいまいにするという。「もやもやして不安になるが、混沌があるからこそ、何かを生み出さないと生き残れないという緊張感が生まれ、新しいものを提案するプロセスができてくる。変化に柔軟に対応し、今求められているものを提供するのが大事だ」
日本メーカーが世界を席巻していた時代は、できあがったシステムにうまく適応し、工場での大量生産をサポートするまじめな人材が必要だったが、「工場を作っている間に世の中が変わってしまう今は、自分でシステムを作るタイプが必要」な時代だ。
田中氏は、GREE立ち上げ当初、出資を持ちかけてきたベンチャーキャピタルから「事業計画書を出して」と依頼され、「事業計画はない。出資したいなら、事業計画書を書いて持ってきて」と話したという。
GMOは「55年計画」という超長期計画を持っているが、個別のサービスについては計画を決めず、まずやってみる姿勢という。「失敗のコストが非常に低い時代。やってみて走りながら考えるのが今だ。ここに登壇している方は、全員が“走り屋”だ」と熊谷氏は指摘する。
エンジニア1人で、世界は変えられる
まつもと氏が開発したRubyにも、計画や目標はなかった。「20年前、窓際プログラマーで、仕事の合間に趣味で作ったのがRuby。ネットで公開したら当たってしまった。事業計画やビジネスモデルがあったわけではない。作っている方も、当たるとは思っていなかった」
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