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「破壊は目的ではない。結果だ」――SkypeやTwitter創業者が語る、イノベーションの道筋新経済サミット2013(1/2 ページ)

» 2013年04月17日 17時06分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 電話の常識を変えたSkype、ブログの常識を飛び越えたTwitter、OSの業界を覆したAndroid……既存のシステムを破壊する新たなイノベーションが、IT業界から生まれている。

 「破壊的イノベーション」とは、どのように実現するのか――4月16日に都内で開かれた「新経済サミット2013」冒頭のセッションで、Skypeの共同創業者・ニクラス・ゼンストローム氏、スマートフォンOSベンチャー「Android」を創業したGoogle上級副社長のアンディ・ルービン氏、Twitterと決済サービスSquareを創業したジャック・ドーシー氏、Pinterest共同創業者のベン・シルバーマン氏がディスカッション。楽天の三木谷浩史社長がモデレーターを務めた。

「いつも違うやり方を考えていた」 Skypeを生み出した“反逆児”

 Skypeを生み出したゼンストローム氏は、子どものころから、あらゆることについて「違うやり方」を探してきたという。「なんでこんなことをしなくてはならないんだろう。違うやり方はないか……と好奇心がわく。流されたくない、大衆になりたくないという意識があった。反逆児なのかもしれない」

画像 ゼンストローム氏

 Skypeは、電話通信事業者にとっては国際通話の一部を奪い取った破壊者に見えるだろうが、原点は、「国際通話が高すぎると、イライラしていた」ことだ。P2P技術を外販する企業を運営していた当時、海外のスタッフとのやりとりを低価格にしたいと考えたのがきっかけで、「海外通信の世界を変えたいと思った」という。

 無料通話が使われると電話が必要なくなってしまうという“業界の破壊者”の側面は、「後に問題になった」という。「破壊や大変革は、そのためにやっているのではない。クリエイティブな事業を目指したら、たまたま、今ある物を破壊してしまったということ」

 破壊的なイノベーションは「今までより良いものを作ろう、今までの人の見方と全く違う見方をし、人の使い方を全く変えよう」という試みで、「たいてい、業界の外からやってくる」という。Skypeのメンバーは、ゼンストローム氏以外は通信関連の経験がない、通信業界の門外漢だ。

「破壊は目的ではない」 ジャック・ドーシー氏

 「私は実は、『破壊的な』という言葉が嫌いだ」──Twitterと決済サービスSquareを創業したドーシー氏はこう打ち明け、「本当に成功したアイデアや会社は破壊を目的にしていたのではない。ビジョンを実現しようとし、その影響として破壊が起きるだけだ」と指摘する。

 「破壊とは、ものごとをランダムに動かすこと」とドーシー氏は定義。「自分が欲しいものは何か」「世界中の人に、毎日使ってほしいものは何か」というビジョンを考え抜き、同時に、新技術やマッシュアップを試し、ニーズと技術の組み合わせを見つけする――そんな試行錯誤が「魔法的な」イノベーションにつながるのだという。

画像 シルバーマン氏

 TwitterとSquareは、「世界を簡単にしたい」というビジョンから始まっている。「Twitterはコミュニケーションを、Squareはコマースを簡単にしたかった。世の中を自分自身のこととして考え、自らの問題意識から発していくのが起業家。会社は、アイデアを世界に広めるためのツールだ」

 Pinterestも、個人的なニーズと一般のニーズ、技術が融合して成長した。創業者のシルバーマン氏は、子どものころから物を集めるのが好きだった。「Pinterestを作った09年当時、消費者向けの大きなネットサービスはテキストベースだったが、私は写真が好きで、自分の物を絵で見せたいと思い、そこを追求した。それに関心を示してくれる人がいるのではと考えた」と振り返る。

“破壊”に適応しないと、既存産業は共倒れに

 破壊的なイノベーションは、長期的に維持できるものなのか――Androidを開発したルービン氏は、三木谷社長のこんな質問に、「ものごとは、必要ならば維持できていく」と答える。

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