“未来IT”で世界を変える すごい国産スタートアップ
人工知能が洋服を選んでくれる ユーザー7万人突破のファッションAIアプリ「SENSY」が目指すもの(2/3 ページ)
渡辺CEOは、大学在学時から人工知能を研究していたが、基礎的な研究が中心で「人工知能が社会をどう変えるのか」を具体的にイメージできず、「研究が社会に結び付かない点に“違和感”を感じていた」と振り返る。
「このままでよいのか?」と思い悩んだ末、大学院への進学をやめてコンサルティング企業への就職を決意。取引先のアパレル業界で目にしたのが、「洋服が作られるだけ作られて、誰にも着られず、大量に捨てられていく」光景だったという。
「例えば、楽天市場で『黒いジャケット』を検索すると90万件以上ヒットする。情報が多すぎると、かえって自分がほしい物と出合えなくなり、無駄が生まれる。人工知能でそんな無駄を解消したかった」(渡辺代表)
制約は「学習させる枚数」
SENSYの人工知能は、洋服の種類をピクセル単位の画像データで判別している。「水玉」「チェック」などの大きな模様ではなく、どのピクセルにどんな色を配置すると、ユーザーが好ましい反応をするか――をレコメンドの判断基準にしているという。
「SENSYは、人工知能の分野で研究が進んでいる“主流”とは違う」――渡辺CEOはこう話す。
現代の人工知能は、あらかじめ膨大なデータを読み込ませ、特定の画像を分類させる研究が一般的だ。例えば、カレーライスの画像を1枚見せ、「何という料理なのか」を答えるには、「事前にカレーライスの画像を1000万枚以上は学習させておく」(渡辺CEO)など、ある程度の“力技”が必要になるという。
今年3月、世界トップレベル棋士に勝利して話題になった米Googleの囲碁専用人工知能「AlphaGo」(アルファ碁)もその一例だ。AlphaGoは、プロ棋士の棋譜画像から数千もの打ち手を学習。500回以上の対戦を繰り返し、データを蓄積してきたと言われている。
だが、SENSYの場合は、学習させるデータ数に大きな制約がある。人工知能に好みを覚えさせるためだけに、ユーザー1人1人が数百~数千万枚の画像を選別するのは非現実的だからだ。限られた枚数の画像から、その人の好みをいかに早く抽出できるか――「アルゴリズムのコアに関わるので、具体的な技術は話せないが、1年半以上、突き詰めて完成した部分だ」と渡辺CEOは自信をみせる。
SENSYをリリースしてから、利用者が「いいね」か「いまいち」か選り分けたサンプルデータも、人工知能の精度向上につなげている。「ユーザーが増えるほど、アルゴリズムの精度が上がる。千葉大、慶応義塾大とも共同で技術開発を続けていて、年内には新しい特許を取得する予定だ」。
「人工知能は、ヒトの仕事を奪わない」
SENSYの活躍の場は、ユーザーの手元のスマートフォンにとどまらない。昨年9月には三越伊勢丹ホールディングスと協業し、百貨店店頭での接客支援サービスを始めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
“未来IT”で世界を変える すごい国産スタートアップ
IoTや人工知能など、一昔前には存在しなかった新テクノロジーで私たちの生活を変えようと挑戦するスタートアップ。彼らはクラウドを活用し、従来ならインフラの制約から大企業にしかできなかったサービス開発をものすごいスピードで実現しています。本特集では、「最新ITを用いたスモールスタート」で急加速している国産スタートアップに注目。彼らが打ち込む新サービスのすごさと、その情熱を伝えます。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
6
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
7
IPO目論見書に「AIは人類の存亡リスク」「コードの9割はClaude製」 Anthropicが示した規格外の見立て
-
8
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
9
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
10
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR