日経「AI記者」の衝撃 開発の背景に「危機感」(2/4 ページ)
「記者の視点」もAIが学習
ちょうどそのころ、企業向けの記事データベースサービス「日経テレコン」を担当するデジタルメディア局でも似た研究をしていた。企業の開示資料から必要なデータを抜き出す研究で、言語理解エンジンの開発などを手掛ける言語理解研究所(ILU)と共同で取り組んでいたのだ。
東大とのプロトタイプの完成後の2016年秋ごろ、ILUの技術を使って本番システムの開発に着手した。まず、企業の決算短信約1万件を人が目視で確認し、売り上げや利益に影響を与えた文章を手動で抽出。「正解データ」としてAIに学習させた。
同時に「記者の視点」も学ばせた。決算短信には「当社の努力により利益が拡大した」などあいまいな記述があったり、赤字なのにポジティブな記述しかないなど整合性がとれない部分もあるが、記者はそれらを無視し、客観的で整合性のある部分のみをピックアップする。AIでもそのような価値判断ができるよう精度を磨いた。
公開「早すぎたか」と思ったが
今年1月、決算の要点を文章で配信する「決算サマリー」としてβサービスを公開した。まずはILUが開発したアルゴリズムのみを実装。文章が不自然になることもあるなどまだ完璧ではないが、いち早く公開することを優先した。「この状態で外に出していいのかと不安になったぐらい」(デジタルメディア局の関根晋作さん)だが、「どこよりも先に出したい」(同局の藤原祥司さん)という思いや、同社の上層部から「早く公開したい」という声もあり、予定より前倒しで公開したという。
反響は大きく、「想像以上に違和感がない。本当に人の手が入っていないのか」「あの日経が、AI記事に挑戦するとは」など好意的なものが多かった。「完成度はまだまだだが、日経のように古い新聞社が新しい技術にチャレンジする姿勢を高く評価をいただいているのかなとありがたく思う」(関根さん)。
人間の記者はどうなる?
「決算サマリー」は今後、文章の自然さを改善し、精度を高めていく計画だ。東大と共同研究したアルゴリズムの実装も検討する。
“AI記者”が進化すれば、人間の記者の仕事がなくなってしまうのではないか――そんな疑問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。
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