「AIが仕事を奪う」への疑問 いま、“本当に怖がるべきこと”は(1/3 ページ)
「人工知能(AI)が原因で失業する」と信じている人は大勢います。では私たちの周りに、人工知能に仕事を奪われた人は居るでしょうか? 少なくとも、今の所は私の周りにはいません。もしかして私たちは、居るはずのない幽霊にただおびえているのではないでしょうか。
そのような怪談が語られ始めたのは、第3次人工知能ブームが始まった2013年ごろと記憶しています。英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らが著した「THE FUTURE OF EMPLOYMENT:HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION? 」という論文に書かれた「10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクがある」という主題が引き金を引き、人工知能脅威論が一気に花開きました。たった20年で労働者の半数が失業するリスクにさらされるのですから、騒然とするのも当然です。
しかしあれから4年、既にオズボーン論文はほとんど否定されており、反証論文も出尽くしている状況です。「人工知能脅威論」とは、過去にあった神話なのです。それなのに日本だけがいまだに人工知能による雇用への影響におびえ、既に否定された論文を持ち出し、怖い怖いとおびえているのです。
なぜ、このような事態に陥っているのでしょうか。今回は、この4年の間にどのような反証があったのか、なぜそれはほとんどのメディアで伝えられなかったのかを検証します。
オズボーン論文の内容を改めて整理する
未来を先取りしたような内容だとしてオズボーン論文は、人工知能本として人気の高い東京大学の松尾豊先生著「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」や、東京大学合格を目指すAI「東ロボくん」を開発した新井紀子先生著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」でも紹介されています。
オズボーン論文はどうやって労働人口の47%が機械に代替されると予想できたのでしょうか。論文ではガウス過程分類法と呼ばれる正規分布を用いた回帰分析手法を使った、と説明しています。
簡単に説明すると、次のようになります。まず、米国・労働省が定義する702個の職業全てに対して、必要とされる数十個のスキルを特徴量として定義します。次に、オックスフォード大学内の有識者によって主体的に選ばれた70個の職業を精査して、自動化可能なら1、不可能なら0を割り振ります。これが教師データとなります。そして教師データから自動化できると判断できる特徴量を機械学習で発見し、それらを基にモデルを作成します。最後にモデルを702個の職業に当てはめて、自動化の確率を求めます。
その結果がこちらです。自動化される可能性が70%を超える職業に就いている労働人口は、全体の47%もいると分かりました。ちなみに、以下の積み上げ面グラフの全面積が、米国における労働者人口を表しています。
X軸にある「コンピュータ化の確率」は、高ければ高いほど自動化される可能性を意味しています。ピンクや赤、薄オレンジで表現されたサービス系やバックヤード系職業が自動化する割合が高く、薄青や薄緑で表現された知識労働系職業は自動化されにくいと分かります。
より詳細な手法を知りたい方は、オズボーン論文を読まれるか、後にオズボーン准教授らと共同研究を発表した野村総合研究所が発表している資料に詳しいので、そちらをご覧ください。
- 日本におけるコンピューター化と仕事の未来(野村総合研究所)
- AIと共存する未来~AI時代の人材~(野村総合研究所)
定性的にしか評価できないと思われた「自動化されるリスク」を、定量的に判断できたという点が非常に画期的で、この論文をキッカケに世界中で雇用と自動化の研究が行われました。
その結果、オズボーン論文に対していくつかの不足点が指摘されました。
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