「AIが仕事を奪う」への疑問 いま、“本当に怖がるべきこと”は(2/3 ページ)
1点目は、職業そのものに実体はなく、成果を出すためのタスクを束ねた総称であるという指摘です。実際に自動化される対象はタスクの方です。それなのに、オズボーン論文は上位概念に当たる職業に目を向けて自動化を判断しています。分析するには粒度が荒いのではないか、という声が多く上がりました。
その批判の代表はヨーロッパ経済研究センター(Centre for European Economic Research)のメラニー・アーンツ研究員たちです。彼女らは職業をタスクごとに分解して検討し、その結果を職業に還元する方法を採択しました。その結果、自動化可能性が70%を超える職業は経済協力開発機構(OECD)21カ国平均で9%だと見積もる「The Risk of Automation for Jobs in OECD Countries」と題した論文を発表しました。
上記の図は、オズボーン論文で示した図のような職業別自動化内訳を、タスクベースで描いた結果です。職業別で見積もったオズボーン論文では左右両側が高く、自動化される・されないがはっきり分かれていますが、タスク別で見積もったアーンツ論文ではその逆でした。
2点目は、自動化されることで生まれるかもしれない新たなタスクや職業を全く無視しているという指摘です。例えば過去の歴史を振り返ってみると、コンピュータが登場したおかげで無数のタスクや職業が自動化されましたが、コーディング、インフラ、保守作業などさまざまなタスクや職業も生まれました。そうした新たな雇用は一切考慮していないのです。
「人工知能が原因で失業する」かもしれないし、「人工知能が原因で就職する」かもしれないのです。オズボーン論文は、その片側だけを技術的に自動化可能かどうかを見ているだけで、雇用に与える全体の影響まで考慮していません。大まかにいうと、それがオズボーン論文への印象です。
もちろん、雇用と自動化に対する考証を切り開いたという点では惜しみない賛辞が送られています。着眼点は素晴らしいけど手法としてはどうなの、と鋭く問い詰めているわけです。
ただし、自動化の波は止まらない
だからといって、私たちに全く関係ない話ではありません。オズボーン論文にしろ、アーンツ論文にしろ、自動化されないとは言っていないからです。
アーンツ論文を受けたOCEDのレポート「Automation and Independent Work in a Digital Economy」では、タスクの50%以上が自動化する職業はOECD21カ国平均で35%だと見積もっています。そして、自動化の手段としてのコンピュータやデジタルそのものに対する訓練が必要だと主張しています。
つまり、職業自体はなくなりませんし、その職業に求められる成果も変わりませんが、成果を上げるためのタスクは、デジタルなハードかインターネット上のサービスによって自動化されると考えればいいでしょう。そして平均9%ほどの職業自体が、自動化が行き過ぎてなくなるのです。
すなわち、新しい技術、つまりデジタルに対応できない人から失業する可能性があります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
8
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
9
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
10
有識者はGoogleやX、Meta、ドワンゴを名指しで批判……総務省、偽広告や誹謗中傷に発信・拡散前の対策求める
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR