NHK「AIに聞いてみた」の違和感 これって本当にAI? データ分析の専門家が解説(1/3 ページ)
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「お金にゆとりがなくても、蛇口を小まめに閉めなければ仕事に満足できる!?」「ストレスだらけの人は結婚・出産祝いを贈れ!?」──AI(人工知能)がこんな提言をする番組をNHK総合が3月3日に放送しました。
タイトルは「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」で、2017年7月22日に第1回を放送。第2回となる今回は「働き方」がテーマです。
第1回は放送前から多くのデータサイエンティストたちが「AIの分析とはどのようなものか」と正座待機していましたが、ネットでは「本当にAIなのか」「統計的に正しい操作がされているのか」など批判の声も目立ちました。一方、今回はやや盛り上がりに欠けた印象です。
私も前回は、見終わった後に幾つかの疑問点をまとめて「NHKスペシャル『どうすんのよ!?ニッポン』AIに聞く前のデータ処理間違ってた!?」と題するコンテンツを公開するほど前のめりでしたが、今回は提言のトーンも少し控えめだったように思います。
しかし実際に放送内容を見ると、今回も首を傾げるものばかりでした。一体どこに違和感を覚えたのか、問題点を整理して紹介していきます。
そもそも、AIって何だっけ?
まず疑問に思ったのが、番組におけるAIが何を指しているのかということ。
話を進める前に整理したいのは、何ができればAIなのかという問題です。実に難しい話で、人工知能学会でもAIとは何かを定義できていません。一様にコレだと言えないのです。
最も狭義なものは、私も執筆に参加した「誤解だらけの人工知能」の著者である田中潤氏による「人工知能とはディープラーニングそのもの」という定義。
逆に最も広義な定義は「人工的な知能」であり、私なりに解釈すると「何らかの自律性がある」と表現すればいいでしょうか。機械自らが状況を学習し、アルゴリズムに従った行動が「自律」を伺わせます。
例えば任天堂のアクションゲーム「スーパーマリオブラザーズ」では、一定のスピードで歩くクリボーをマリオがジャンプして踏みつけるわけですが、マリオの動きを予測してクリボーがそのジャンプを避けたら――「お、ちょっと頭いいじゃん」と思うのではないでしょうか。そうした振る舞いをアルゴリズムで再現できるなら、広義の意味で人工知能と見ていいのでしょう。
では、番組で活躍する「社会問題解決型AIひろし」は自律性を持ち合わせているのでしょうか。
番組を見た限り、例えば約21万人分の個人データの分析には決定木分析と呼ばれるデータマイニング手法が、企業の生産性を測る効率性分析にはSVM(サポートベクターマシン)という、教師あり学習を用いるパターン認識モデルが使われていたと推測します(公式サイトでも言及があります)。
ちなみに、今回のAIひろしについてはディープラーニングが使われていないから人工知能では無い、と言うつもりはありません。知能らしさを再現できていれば問題無いと考えます。
問いたいのは、AIひろしはデータを食わせればあらかじめ設定されたアルゴリズムに従って自律的に提言を行うのか、それとも、AIひろしが収集・分析したデータに人間が解釈を加えて勝手に提言しているのかどうかという点です。
冒頭の「お金にゆとりがなくても、蛇口を小まめに閉めなければ仕事に満足できる!?」は、AIの提言なのか、人間(制作陣)の提言なのか。
前者はAIっぽいですが、後者は単なる分析です。そして恐らくは後者なのではないかとユーザーの多くが感じるからこそ、前回の放送に対して批判の声が上がったのではないでしょうか。
もしあらゆる社会情勢を表すデータを機械に食わせたからAIだと表現しているなら、それは違います。単なる物知りな機械です。Wikipediaも物知りだからAIになるのでしょうか。
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