エネルギー業界では難しかった“フルクラウド化”に挑戦 発電会社が3カ月でERPをAzureに移行するまで(2/3 ページ)

3カ月という短期間でSAP ERPをAzureにリフト

 クラウド化のプラットフォームに選んだのはMicrosoft Azureだ。JERAはグローバルでビジネスを展開しており、それに対応できる世界水準のクラウドサービスが必要だったからだ。SAP ERPのクラウド化に当たり、データベースとなる「SAP HANA」の稼働実績の面でも、Azureの対応の幅広さを評価した。

 また、オンプレミスのSAP ERP環境をIaaSにリフト(通常のクラウド移行)するだけでなく、今後のシフト(クラウドの特性を生かす形での移行)も視野に入れ、Azureを選んだという。「Azureに含まれる新しいクラウドサービスを使うことで、JERAのITシステムの将来像を描けると考えた」と藤冨氏は話す。

 19年4月からインフラのフルクラウド化を本格的に検討し、7月から具体的な設計を始めた。フルクラウド化プロジェクトには、IT部門の約80人のうち20人ほどが参加。クラウドインテグレーションに強みがある新たなパートナー企業も迎えた。

 クラウド化の取り組みと並行し、それまでベンダーに依存していたIT部門の体制変更にも着手。開発などの内製化にも取り組み始めた。

 こうして19年11月にクラウド上でインフラ構築を始め、およそ3カ月でSAP ERPのAzureへの移行を終えた。続いてERP周辺にある燃料取引リスク管理システム、燃料貯蔵品管理システム、通関業務支援システム、連結決算システムなど20個のシステムもAzure移行に取り組み、20年5月30日に完了した。

photo ERPのAzure移行をわずか3カ月で実現した

マネジメントでは苦労も

 「極めて短期間でこれらの移行を実施したことで、苦労も多かった」と藤冨氏は振り返る。グローバルでビジネスを展開する同社では、Azureへの移行プロジェクトに外国人のメンバーが多く参加しており、多様性の高いチームでのコミュニケーションの取り方に苦労したという。

 文化の違い、コミュニケーション方法の違い、開発手法の違いがあり、普段とは勝手が違う中で、短期間でチームを戦力化しなければならない。藤冨氏らは、スムーズにチームを運営するために、初期段階でメンバーがお互いの違いを理解できる場を持つことに時間を費やした。

 そんなプロジェクトチームのモットーは「スピーディー」。これはJERAの企業全体のコンセプトでもある。これをメンバーが意識し、実践し始めたことで、徐々にチームはまとまっていった。今回のプロジェクトでは、クラウドの特性を生かして柔軟に仕様を変化できるよう、開発スタイルもウオーターフォール型からアジャイル型に変更した。

 開発スタイルの変更後は、チームメンバーは全員でハンズオンを行うなどし、藤冨氏らの指示ではなく、自ら考えて動くようになった。結果的には「ベストかどうかは分からないが、多様性の高いメンバーでプロジェクトをスムーズに進めることができた」と藤冨氏は話す。

印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

この記事の著者

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR