コロナ禍で音楽制作もリモートワーク 遠隔で「立ち会い編集・ミキシング作業」は可能か?(2/2 ページ)
ハイレゾレベルのスペックでの再生が可能
そこで試したのは、Audiomoversの「LISTENTO」というサービス。音楽制作者向けの音源送受信サービスで、特定の拠点に向けてDAWからの音を直接配信できる。受信側は、所定のURLをクリックするだけでブラウザ内で再生できるので、PCの操作に不慣れな関係者でもコラボ作業に容易に参加できる。
DAWのマスタートラックに専用のプラグインを挿入することで、Audiomoversのサーバを経由して各拠点に向けて音楽を配信する仕組み。有料だが、1週間3ドル99セント、1カ月9ドル99セント、1年間99ドル99セントと3つの価格設定で提供されているので利用頻度に合わせて選べる。AAX、AU、VST、VST3の各プラグイン形式に対応しているので、主要DAWで利用可能だ。
肝心の音質だが、図のように最高PCM32ビットからAAC96Kbpsまで通信状態により選択できる。ただ、さまざまな環境でテストしてみたが、受信側がWi-Fiの場合は、AAC96Kbpsでも音が途切れることがあり、安定してリスニングしたければ、有線(イーサネット)接続が必須だと感じた。光ファイバー経由の宅内有線接続であれば、PCM16ビットでも安定して再生可能だった。とはいえPCM32ビットは、有線でもブチブチと途切れ使い物にならなかった。
実際の作業では、相手先のネット環境が、マンションの光ファイバーやケーブルテレビなどさまざまだったので、AAC192~128Kbpsの間で適宜切り替えながら実施。それでも、音質的にはZoomよりはるかに良好で、「音質的にストレスを感じることはなかった」(アーティスト談)という。
意思疎通はGoogle Meetで実施。しかし問題も……
さて、音を送信する環境は「LISTENTO」で確立できた、次は、双方向のコミュニケーション手段を考えなければならない。今回は、関係者全員が、Gmailのアカウントを所持していたこともあり、「Google Meet」を利用した。リスニング側は、ブラウザで「LISTENTOの聴取画面とGoogle Meetの両方を開いておけばいいので、簡単な操作で参加できる。アーティストの1人は、音源のモニターはPCで行い、Google MeetはiPadを利用する形でリモートに参加した。
そして、実際の編集作業を行う側(筆者)は、iMacでDAWを走らせ、Google Meetは、手元のMacBook Proを使用した。筆者が使う「Pro Tools」というDAWは、GPUのパワーを意外に消費するので、Google Meetは別のマシンで走らせた方が、DAWへの負荷が減らせる考えたからだ。
ただ、実際に始めてみると、1つの問題にぶち当たった。各人のGoogle Meetのマイクが、音源のモニター音を拾ってしまい、それがGoogle Meet経由で参加者全員に流れるという現象に直面した。考えてみれば当たり前で、スピーカーからモニターしていれば、当然起こりうることだ。
そこで筆者は、ヘッドフォンを利用してモニタリングすることにした。他の参加者は、通常は、マイクをオフにしておき、発言するときだけオンにするというルールを作った。一般的なリモート会議でも、このような措置は、マナーとして定着していると思う。
結局、前述のような微細にわたる編集作業を実施したことで、トータルタイムで約60分のCDのマスターを完成させるのに、1日あたり約9時間の作業を5日にわたって行った。コロナ禍において、とてもではないが、リアルに集合することがはばかられる状況だったことがご理解いただけると思う。
ただ、リモート作業ゆえに、対面と比較して意思疎通等がスムースに進まず、余計に時間がかかったのではないかと問われればそれは「イエス」だ。とはいえ、リモートゆえの延長分は、おそらく1割程度だと認識している。
クラシック音楽は、基本的に楽譜に忠実に演奏するので、「何小節の何拍目までテイク1で」「フェルマータまでは、バイオリンの音量を1デシベル程度上げて」などと定量的な指示で意思疎通が可能になる。その点はリモート向きだと感じた。
次は、リモートデスクトップを駆使して、アーティストにDAW操作の負担をかけず、演奏に専念してもらう形のリモート録音に挑戦したみたいと考えているが、こればかりは、アーティスト側に録音機材がそろっているなどの条件が必要になるだけに、少しばかりハードルが高くなりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
4
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
5
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
6
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
7
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR