AppleとSpotifyのストリーミング報酬比較で浮かび上がる、音楽コンテンツビジネスの次の戦略(2/2 ページ)
―― 表を見ると、両者ともに、年々単価が下がっています。
田中氏 確定的なことはいえません、ただ、音楽提供者としての皮膚感覚で思うのは、ユーザーの使用率が年々上昇しているのではないでしょうか。ユーザーが増えれば、総収入は増えますが、1ユーザー当たりの聴く楽曲数が増えれば当然、単価は下落します。サブスクの宿命です。また、大物アーティストが続々と参入したことも関係しているのかもしれません。好きなアーティストがカタログにリストされると、ユーザーの聴取回数は、おのずと増加します。
―― 他のサブスクプラットフォームの単価についても教えてください。
田中氏 主要プラットフォームの単価を表にまとめました。総じてSpotifyより高い単価がついています。レコチョクが突出しているのは、理由があります。有料ユーザー数が多い割に、利用率が低いからです。収入を案分して分配するわけですから、ストリーム数が少なければ、それだけ単価は上昇します。
レコチョクは、dミュージック、dヒッツ、ひかりTVミュージックといったドコモ系のサブスクに楽曲を提供しています。携帯電話契約時の「レ点営業」が影響している可能性があります。店頭で販売員の言われるままに、契約したはいいが、全然聴いていないユーザーが多いのかもしれません(笑)
―― レーベルとしては、レコチョク、LINE MUSIC、AWAあたりに楽曲を提供するともうかるのですか?
田中氏 ほとんどのレーベルは、プラットフォームを限定して楽曲提供を行うより、全方位で提供していると思います。パッケージメディアと異なり、販売チャンネルを増やしてもコストは変わりません。それに、弊社のように、クラシックを中心に提供しているレーベルは、グローバルマーケットを狙えるので、ユーザー絶対数の多い、SpotifyやApple Musicに提供する方が、トータルで高い売り上げが見込めます。
―― 地域により単価に差が出てくるのでしょうか?
田中氏 これも表を用意しました。Apple MusicとSpotifyの2020年第4四半期の地域別単価です。Apple Musicは、日本と欧州の単価が高い傾向にあります。一方、両者ともに、アジア、太平洋圏(日本を除く)の単価が低いですね。アジア圏では、日本の楽曲もたくさん聴かれるのですが、再生回数の割には、収益面で不利です。ストリーム単価は、現地通貨価値や聴取時間の多寡など、いろいろな要素が絡んでいるようです。最初に申し上げたように、その辺りの詳細は、ブラックボックスなので部外者には見えてきません。
―― 小さなレーベルとして、サブスク時代に適合した事業戦略について教えてください
田中氏 SpotifyもApple Musicも、一部の例外を除いて、ワールドワイドで、権利処理を行った上で配信してくれます。弱小レーベルは、グローバルな権利処理のことを心配しないで楽曲を提供できるので、助かります。逆の見方をすれば、グローバルコンテンツで勝負しないと、生き残っていけないと思います。地域別の表を見ていただければ分かるように、欧州の単価が高いので、弊社では楽曲内容はもちろん、アルバムカバーのデザインやタイトルの付け方など、欧州を意識して作成するようにしています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
2
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
3
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
4
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
5
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
6
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
7
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
-
8
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
9
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
-
10
松本デジタル相、24.6万件漏えい可能性について説明 「既知の脆弱性を対応前に悪用」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR