iPhoneのカメラは何を目指す プロと一般人の差を埋める「シネマティックモード」の真実(5/5 ページ)
誤解してほしくないこともある。
この種の機能は、スマホメーカー、特に演算による映像生成である「コンピュテーショナルフォトグラフィー」を志向する企業なら、どこも思い付いていたはずだ。発想としては写真に機械学習を使ってボケ味を入れる「ポートレートモード」の延長線上にある。性能アップによって、静止画の機能を動画まで広げるのは自然な考え方だし、動画でフォーカスを後から変える、という機能もなかったわけではない。出てくるタイミングが違っただけ、という言い方もできる。
ただ重要なのは、「これで写真だけでなく、動画の持つ情報が格段に増える」ということだ。
現在もポートレートモードで撮影した「深度情報のある写真」を使うと、さまざまなことができる。極論すれば3D情報になるということなので、写真のフォーカスを変えるだけでなく、ライティングやレンズ効果変更など、写真加工の幅が広がるわけだ。
次の画像はiOS用アプリ「Focos」のものだが、このように深度情報を見ながらライティングを変え、写真を加工することが可能になっている。
動画が深度情報を持つということは、こうした可能性が広がり始める、という話なのだ。VRやARなど、3D空間で活用するデータとしても広がりそうだ。映像・画像から3Dデータを作る「フォトグラメトリ」の精度向上などにも活用できるかもしれない。
写真や動画に深度情報を追加する試みは長く続いてきた。スマホという「高性能なプロセッサ」「複数のカメラ」を持ち、最近はLiDAR(ToFセンサー)などの「空間構造把握用センサー」も搭載する機器は、結果として「写真・動画のフォーマットを変える」ことに成功しつつある。
もちろん、その情報は完全なものではない。より大きなレンズやセンサーを使い、さらに高性能なコンピュータによる後処理を行った方が精度は上がる。
とはいえ、日常にこの種のデータがあふれていくことは、確実に世の中を変えていくきっかけになるだろう。
「カメラしか進化しない」といわれるが、カメラを軸にしたスマホの激しい競争が続いていることで、普通のカメラだけでは生まれない新しい価値が登場しているのだ。
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