“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る
ラップトップPCのための基礎技術が生まれるまでの紆余曲折 APMからACPIへ(2/4 ページ)
さて、この世代のモバイル(?)機の場合、基本的な発想は「とにかくコンポーネントを省電力化する」しかない。バックライト付き液晶は電力が多いからバックライト無しだし、LCDもフルカラーではなくモノクロ、CPUも消費電力の多い286以上ではなく、MS-DOSが動く8086でしかもCMOS版にして消費電力を落とすという仕組みだ。
ただこれは要するに機能や性能と消費電力をバーターしているという話で、抜本的な解決にはなっていない。
Intel自身としても、当時低消費電力で高性能なプロセッサをモバイルあるいは組み込み向け用途に模索していた。1991年にはSMM(System Management Mode)を搭載したi386SLをリリース(写真4)、1992年には同様にSMMを搭載したi486SLをリリースしている。
このSMMとは要するに電力管理機構であり、StandbyとSuspendという概念をx86プロセッサに導入した最初の仕組みである。
端的に言えばStandbyは「軽い待機モード」で、すぐ元の状態に復帰できるようにメモリの内容は可能な限り保持し、CPUなどもすぐ戻れるように電源を通電しつつ待機させる状態。対してSuspendはメモリの内容をHDDなどに退避させ、CPUやメモリは完全に電源オフする、本格的な待機モードである。これを可能にするために、SMI(System Management Interrupt)という電源管理専用の割り込みを新たに追加し、これを利用してStandby/Suspend状態に移行したり、そこから元の状態に復帰できるようにしたのがi386SL(と後追いでi486SL)である。
このSMMをソフトウェアから利用できるようにするためのI/FをBIOSに追加しよう、というのがAPM(Advanced Power Management)である。
SleepはともかくSuspendになると、メモリの内容をHDDに退避したり、逆に復帰時にはHDDからメモリに内容を展開したりする必要がある。これはもちろんCPUだけでは実装できず、OS側の対応が必要になる。
直接SMMをプログラムから制御しても良いのだが、Intelとしては別にMicrosoftと心中するつもりはなく、複数のOSでこのSMMを使ってもらうためには標準的なAPIがあった方が好ましい。Microsoftとしても、今後SMM周りの仕様が絶対に変化しないという確証でもない限り、標準的なAPIを用意して、このAPIの順守をIntelに対応してもらう方がありがたい。「CPUが変わるたびに省電力機構周りの作り直し」は避けたいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る
RISCの歴史、Apple Siliconの歩みを語ってきた大原雄介さんのコンピュータ歴史連載、テーマはズバリ「PC」だ。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
7
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
8
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
9
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
10
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR