「分業化した営業組織がうまく回らない」──SaaS企業の課題、セールスフォース流の解決策は(1/2 ページ)
SaaSビジネスの先駆者、米Salesforce。同社の成長を支えてきたのが、営業活動を細分化・分業化した仕組み「The Model」だ。SaaSやサブスクリプションビジネスが台頭する中、The Modelは営業・マーケティング組織の効率的な形として注目を集めており、日本でも取り入れる企業が増えてきている。
一方で、The Modelを導入したからといって、必ずしも成果が出るとは限らない。うまく機能せず、以前のやり方に戻ってしまうケースも少なくない。しかしSalesforceでは、細分化した組織を横断して支援する「セールスストラテジー部門」を設置し、The Modelの失敗を防いでいるという。
セールスストラテジー部門はThe Modelを円滑に機能させるために、どんな活動をしているのか。Salesforce日本法人のセールスフォース・ジャパンでセールスストラテジー部門のトップを務める田中遼太常務執行役員に詳細を聞く。
営業活動を4プロセスに分ける「The Model」
The Modelは、営業活動における分業体制のモデルとして知られている。営業活動のプロセスを、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4つに分割。それぞれが専門業務に注力し、求められるKPIを達成していく考え方だ。田中常務は「マーケティングで獲得した潜在顧客を商談化・受注し、契約継続していくというサブスクリプションモデルのなかで、成果を最大化していくための手法」と説明する。
このThe Modelには、従来の営業組織にはないメリットがある。例えば、分野ごとにKPIを設定し、それにひもづくデータを基に営業活動を研究できる点だ。営業プロセスの再現性および効率性が高められたり、顧客の購買行動の変化に柔軟に対応しやすくなったりするという。
一方で落とし穴もある。ありがちな失敗例としては、分業そのものが目的化してしまい、部門間での対立につながってしまうパターンが挙げられる。
データの扱い方に失敗する例もある。各分野でデータ化していない案件が発生し、情報のやりとりが難しくなる“サイロ化”の状態に陥り、成果につながらないケースなどだ。
情報源の統一と俯瞰 “ありがちな失敗”を独自部門が防げるワケ
セールスストラテジー部門は、こうした課題の克服を目指す組織だ。データドリブンな組織活動の実現に向け、データ分析やその結果を基にした意思決定をサポートする役割を担う。
一般的な営業企画部門と違い、営業部門内ではなく独立した部門として存在している。営業部門外の利害関係者としての視点を持ち、客観的な立場から営業戦略を提案できるよう、独立した組織になったという。
担当する業務は、営業組織の戦略立案や、営業活動のオペレーションとその改善、営業人材のKPI管理などだ。The Model型組織の中でも、主にマーケティング~営業部門間の支援を担うが、場合によっては間接的にカスタマ―サクセスを支援することもあるという。
重視しているのは、データ活用における情報源の統一だ。The Model型の組織は営業活動を通して得た情報を活用しやすいのが強みだが、データの解釈や参照するデータがバラバラでは部門間での意思疎通に問題が出る。営業活動が順調でないときの原因究明がしにくくなる可能性もある。そこで各部門が見るべきデータを統一し、共通の考え方で営業活動を進められるようにしているわけだ。
セールスフォース・ジャパンでは、CRM(顧客関係管理ツール)「Sales Cloud」「Service Cloud」やドキュメント管理ツール「Salesforce Anywhere」、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Tableau」、チャットツール「Slack」を各部門の共通ツールに設定。情報を同一のプラットフォームに集約し、共通の情報を基にコミュニケーションできるようにしている。
セールスストラテジー部門は各種ツールに集まったデータを基に、信頼できる情報源とすべきデータを決定。これを営業活動の改善や、個人のKPIに落とし込んでいる。これにより、各関連部門間の連携がスムーズに進むという。
The Model型の組織によくある失敗として、商談化につながらない原因が、見込客をつくるマーケティングプロセスにあるのか、それを受け取るインサイドセールスにあるのか分からず、責任を押し付けあってしまうケースがある。
一方、セールスフォースでは、セールスストラテジー部門主導の下「パイプライン・カウンシル・ミーティング」という組織横断の会議を実施。セールスストラテジー部門が定めたデータを基に現状を議論し、課題の所在を明確化しているという。「そもそも見ているデータが正しいのかどうかといったところから確認する必要がなく、建設的な議論に時間を割きやすくなる」(田中常務)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
2
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
3
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
4
Apple、「iPad mini」を大幅刷新 8.5インチOLEDとA20 Pro搭載、防水にも対応 11万9800円から
-
5
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
6
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
7
ジョーシンへの不正アクセス、最大623万件漏えいか 運転免許証2件・マイナカード1件なども
-
8
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
-
9
野村総研、サイバー攻撃時の「能動的なシステム停止」を支援する新サービス
-
10
タイムズカー流出で顧客らが損害賠償求め運営会社提訴へ サイト開設の弁護士が記者会見
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR