小寺信良のIT大作戦

不祥事を起こしたクリエイターの作品は、消えるべきなのか?(1/3 ページ)

 「アイドルマスター シンデレラガールズ」「ウマ娘 プリティーダービー」「アイカツ!フォトonステージ!!」など数々の人気アニメやゲームに楽曲提供をしていた作曲家の田中秀和容疑者が、10月25日に強制わいせつ未遂容疑で逮捕された。

 報道を受けて、多くのアニメ・ゲームファンに動揺が走った。過去、不祥事を起こしたアーティストの作品は、配信停止や販売中止となる例が多いからである。特に田中容疑者の作品は、個人のアーティスト向けというよりは、アニメ作品のオープニングやエンディング、挿入歌など、作品の裏方として活躍していた。それゆえに、もし関係する作品が一斉に配信・販売が停止となれば、ことは田中容疑者1人の問題ではなく、数十作品にも及ぶ。

 実際、12月7日に解禁されたアイドルマスター シンデレラガールズのサブスク配信では、田中容疑者の楽曲が除外されている。

「アイドルマスター シンデレラガールズ」では田中容疑者が提供した楽曲も多い。サブスク配信のリリースには「上記タイトルから一部の楽曲で配信は予定しておりません」との注釈がある

 その一方で昨今では、作者本人の罪と作品は切り分けるべきではないかとする考え方も強くなってきている。つまり、作品には罪はないのではないか、ということだ。

 そもそも海外では、不祥事を起こしたアーティストの楽曲が販売中止になるといった例はあまり聞かない。ただ本人の行動ではなく、楽曲が差別的であったり、個人を攻撃しているなどの理由から、いわゆる「業界を干される」という例はあるようだ。

 日本においては、逮捕の段階でなぜかレーベルが謝罪し、配信停止や販売自粛となる例が多い。逮捕は裁判前でまだ罪状が確定していない状態であるため、犯罪者という扱いはしない。そのため、「容疑者」や「被疑者」と呼ばれる。状況によっては起訴が取り下げられるなどして、無罪となることもあり得る。

 つまりまだ疑わしいという段階で、本人の親代わりでも何でもないレーベルが本人に代わって謝罪したのち、作品を世の中から封印するという行為にどういう意味や根拠があるのか、多くの人が考え始めたということなのだろう。いやもちろん、裁判にて罪状が確定したあとであっても同様である。

 今回は、この問題を考えてみたい。

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ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。

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