Innovative Tech
“顔”を印刷したTシャツで顔認識システムをだませる? 実在しない顔をAIで生成、Tシャツ100枚で検証
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2
ドイツのHochschule DarmstadtとスイスのIdiap Research Instituteに所属する研究者らが発表した論文「Attacking Face Recognition with T-shirts: Database, Vulnerability Assessment and Detection」は、顔写真がプリントされたTシャツで顔認識システムを欺くプレゼンテーション攻撃(物理的な偽物で生体認証を欺く攻撃)を検証した研究報告である。ターゲットの顔がプリントされたTシャツで顔認識システムを欺けるかを調査する。
この攻撃を検証するために研究チームは、異なる顔の写真をプリントしたTシャツ100枚を用意する。プリントする顔画像は、画像生成モデル「StyleGAN」でランダムに生成した実在しない顔。顔画像は性別や肌色、年齢をランダムに散らしており、顔の角度や照明も調整されている。
このように作った「敵対的Tシャツ」を参加者8人に着用してもらい、1枚のTシャツにつき、8種類のポーズ(上下左右を向く、手で顔を隠す、フェイスマスクを着用など)をとってもらう。撮影は可視光(RGB)と深度データの両方で行う。
これらの撮影した画像を使用して、合計1608件の画像を含む、Tシャツ顔プレゼンテーション攻撃データベース(T-shirt Presentation Attack Database、TFPA)を作成する。
実験では、まず作成したデータベースを3つの顔検出アルゴリズム(RetinaFace、MTCNN、dlib)を使用して、プリントした顔が検出可能かどうかを分析する。結果として、8つのポーズ全てにおいて、3つの顔検出アルゴリズムの平均検出率は99%であり、Tシャツの顔がほぼ全てのケースで正常に検出できた。
次に、顔認識システムへの攻撃の成功率を分析し、顔認識システムの脆弱性を評価する。評価の結果、Tシャツの顔が正しく検出された場合、攻撃の成功率は92.6%以上と非常に高いことを示した。
なお、顔検出システムが本物の顔とTシャツの顔を同時に検出する場合、エラーが発生する可能性が高くなる。このようなシステムでは、この研究で示したように、顔をフェイスマスクで隠す、または手で本物の顔を隠すことによって成功率を高められる。
Source and Image Credits: M. Ibsen et al., “Attacking Face Recognition with T-shirts: Database, Vulnerability Assessment and Detection,” in IEEE Access, doi: 10.1109/ACCESS.2023.3282780.
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
7
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
8
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
9
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
10
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR