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スマホ周辺機器の“電源ランプ”から「暗号化キー」を盗む攻撃 16m先からカメラで撮影し盗む

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このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2

 イスラエルのネゲヴ・ベン・グリオン大学に所属する研究者らが発表した論文「Video-Based Cryptanalysis: Extracting Cryptographic Keys from Video Footage of a Device’s Power LED」は、スマートフォンと接続する周辺機器などの電源LED(電源ランプ)をカメラで撮影し、その映像を解析することでその機器から暗号化キーを盗む攻撃を提案した研究報告である。

USBハブを介してスマートフォンと接続するスピーカーの電源LEDを別のスマートフォンのカメラで撮影し、暗号化キーを取得している様子

 この攻撃は、ターゲットである機器の電源LEDを市販のビデオカメラ(スマートフォンのカメラやインターネットに接続した監視カメラなど)を用いて撮影することで行う。

 CPUがさまざまな暗号処理を行うとき、対象となるデバイスの消費電力は変化する。この変化により、ターゲット機器の電源LEDの輝度や色が変化する。これはターゲット機器本体だけでなく、ターゲット機器に接続した周辺機器(USBハブなど)の電源LEDの輝度や色が変化する。つまり、ターゲット機器の電源LEDだけでなく、ターゲット機器に接続した周辺機器の電源LEDへの攻撃も可能となる。

 電源LEDの変化を詳細に捉えるために、まず、撮影した電源LEDの映像を画面いっぱいまで拡大する。次に、カメラに搭載されているローリングシャッターを用いる。ローリングシャッターを作動すると、サンプリングレートをアップサンプリングして、1秒間におよそ6万個の計測値を収集できる。

 このようにローリングシャッターを悪用することで、電源LEDの変化を捉え攻撃者がターゲット機器に保存する暗号化キーを推測できるだけの詳細情報を収集可能となる。

 この攻撃は、ターゲット機器の電源LEDの強度/輝度が消費電力と相関するためで、多くのデバイスでは、この相関を切り離す有効な手段(フィルター、電圧安定器など)を持たず電力線に直接接続されているため成立する。

 この攻撃を実証するための評価実験を2つ行った。1つはSamsung Galaxy S8を充電するのに接続するUSBハブに接続するスピーカー(Logitech Z120)の電源LEDをiPhone 13 Pro Maxのカメラで撮影するというもの。撮影した映像を解析することで、暗号化キーの取得に成功した。

実験のセットアップ。Samsung Galaxy S8が接続するUSBハブに接続するスピーカーの電源LEDをスマートフォンのカメラで拡大して撮影している様子

 2つ目は、16m離れた場所にあるスマートカードリーダーをPCと接続したカメラで撮影するというもの。映像を解析したところ、256ビットのECDSAキーを2分で取得できた。ここで撮影したカメラを監視カメラに置き換えることで、監視カメラをハッキングした攻撃が行える。

実験セットアップ。16m離れたところにあるスマートカードリーダーの電源LEDをカメラで撮影している様子

Source and Image Credits: Ben Nassi, Etay Iluz, Or Cohen, Ofek Vayner, Dudi Nassi, Boris Zadov and Yuval Elovici. Video-Based Cryptanalysis: Extracting Cryptographic Keys from Video Footage of a Device’s Power LED.

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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。

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この記事の著者

山下裕毅
山下裕毅

2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。

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