小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
放送システムを「ソフトウェアベース」で作るには FOR-Aならではのアプローチと、“フルIP化”への懸念(3/3 ページ)
「IPだけ」でシステムが組めるか
既存システムの機材更新が迫っている放送局も多く、今後はこうしたソフトウェアのシステムだけになってゆく……と考えられてきたが、どうもそういう未来を安易に予想することができなくなってきた。
事の発端は、昨年7月に起こったテレビ朝日の放送事故である。ネットワークスイッチ内のメモリでエラーが発生し、送出サーバが制御不能になったという。番組送出サーバはバックアップも含めて3系統あり、監視システムも2系統あった。問題のネットワークスイッチは監視システム側にあり、2台の監視システムがループ障害を起こしたため、大量のデータが流れてきて送出系の3サーバが操作不能になった、という経緯のようだ。
ネットワークスイッチのエラーの原因は、その後の調査検証で「中性子線の衝突」とされた。原因の特定方法などについては賛否あるところだが、ネットワーク上の何らかの障害が、システム全体の制御不能につながる具体的な事故が起こったことで、バックアップシステムの構築法を再考せざるを得なくなった。
テレビ朝日の場合は、マスター設備で障害が起こったために影響も甚大だったが、制作のあちこちがIPベースでつながった状態になれば、末端の故障の影響がシステム全体に及ぶということも考えられる。仮にIPライブシステムが制御不能になった場合、どのようにバックアップを構築すべきか。
旧来のSDIベースの放送システムも、現存するならバックアップシステムとして残しておいて、ハイブリッドで運用していくという方法も考えられる。だがその場合、IPシステムの特徴である省人化や効率化ができなくなる。もしものために余剰人員をスタンバイさせておくのであれば、結果的に省人化もできないことになる。
昨年のテレビ朝日の障害は、今後システム更新する放送局のバックアップシステムの作り方に大きな問いを投げかける。省人化が必要なのは、人を減らしたいのではなく、すでに人がいなくなっているからだ。この対応は避けられない。
25年はFOR-A IMPULSEやソニーContents Production Acceleratorなど、複数の放送IPシステムが登場してくることになる。実際に導入するとなれば、じゃあ現実問題としてバックアップシステムはどこまでやるかということも、議論になっていくだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
2
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
3
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
4
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
5
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
6
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
7
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
-
8
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
9
幻の「ちいかわ」コラボ第3弾皿、捨てちゃうの? くら寿司に聞いてみた
-
10
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR