あなたの領収書、3分で偽造できます──生成AIが暴いた日本企業「デジタル文書」の致命的欠陥(1/3 ページ)
タクシーの領収書をスマホで撮影し、生成AIに指示すると、日付が数秒で書き換わる。請求書の「500万円」が「600万円」に変わる──8月26日に開かれた、ウイングアーク1st(以下、ウイングアーク)の記者発表会では、そんなデモに会場がざわつく一幕があった。
デジタル帳票で国内トップシェアの同社が、あえて「改ざん」を見せた理由。それは、日本企業の電子文書に潜む致命的な欠陥を示すためだった。電子文書が改ざんされていないことを証明するために用いられる技術が「タイムスタンプ」だが、多くの日本企業では大量の文書を発行時に処理するのが難しいことから、「受け取り側」がタイムスタンプを押すという慣習がある。このため受領までの間、文書は“改ざんし放題”の状態となっているのだ。
こうした問題に対応するため、同社がこの日発表したのが新サービス「Trustee(トラスティ)」だ。従来「30秒に1回」だった文書処理速度を「秒間1000文書」へと高めることで、高速かつ低コストで文書にタイムスタンプを付与できるようにした。発行時点でのタイムスタンプ付与を現実的に可能なものとし、生成AI時代のリスクへの対応を図る。
「この領収書の金額を1万円に書き換えて」
ウイングアーク執行役員CTOの島澤甲氏が記者会見で示したのは、制限のかかっていないAI──同氏が「DarkAI」と呼ぶツールを使った改ざん例だ。
通常のAIサービスなら、「この領収書の金額を1万円に書き換えて」と指示しても「不適切な要求」として実行を拒否する。だがこのAIは違った。2023年9月29日付のタクシーの領収書が「2025年4月9日付」に変わり、PDF請求書の「500万円」の数字が「600万円」に書き換わった。
使われたツールは誰でもアクセスできるもので、プログラミングの知識や、特別な技術などは不要だ。日常会話レベルの指示で、文書の改ざんが可能だ。「生成AIの登場で不正の難易度が下がった」と島澤氏は指摘する。
同社が大企業500社を対象に行った調査でも、32.2%が「取引先から文書の真正性を疑われた経験がある」と回答。29.6%は「実際に改ざんが疑われる事案があった」としており、問題が現実化していることが示されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「ペンギンを返して」 Suica新キャラ候補3案公開でSNSに戸惑いの声 一般投票は8日から
-
2
大雨で「首都圏外郭放水路」稼働 濁流が“地下神殿”を満たすまでの動画公開 国交省
-
3
幻の「ちいかわ」コラボ第3弾皿、捨てちゃうの? くら寿司に聞いてみた
-
4
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用認め謝罪
-
5
Duolingoの新アイコンが「気持ち悪い」 世界のユーザーから「元に戻して」の声
-
6
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
7
くら寿司、「ちいかわ」グッズ不正で「警察と相談、厳正に対処」 メルカリと連携も
-
8
メルカリ、くら寿司ちいかわ騒動巡りコメント 出品削除・禁止の有無は
-
9
Suica、3つの新キャラ候補を発表 ネット投票で決定へ ペンギンは27年3月末で卒業
-
10
OpenAI、ミレニアム懸賞問題「ナビエ・ストークス方程式」をAIが解決したと発表 数学者は経緯に反発
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR