Innovative Tech
人間の“脳細胞”で動く「データセンター」開設へ 豪スタートアップなどが着手 消費電力は電卓以下
Innovative Tech:
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米Bloombergなどの報道によると、オーストラリアのスタートアップ企業であるCortical Labsは、人間の脳細胞を動力源とする初の生物学的データセンターをオーストラリアのメルボルンと、シンガポールに建設中という。
この施設には、従来のプロセッサで稼働するサーバラックの代わりに、「CL1」と呼ばれる生体コンピュータユニットが収容される。CL1は、幹細胞や人間の血液細胞から変換・培養された生きたヒトニューロンを、マルチ電極アレイ(MEA)と呼ばれるシリコンチップ上に配置したものだ。このチップを通じて電気信号の送受信が行われ、ソフトウェアと細胞がリアルタイムに相互作用する仕組みとなっている。
同社の技術的基盤となっているのは、研究チームが2022年に学術誌「Neuron」で論文発表した、培養脳細胞とシリコンチップを融合させた生体コンピュータシステム「DishBrain」だ。この研究では、Pongゲームのプレイ実証に成功している。また、26年2月にはより複雑なゲーム「DOOM」をプレイさせることにも成功している。
AIの急速な普及に伴い、データセンターの膨大な電力需要や水消費、シリコン不足といった環境・資源問題が懸念される中、生体コンピュータが新たな解決策として注目を集めている。生物学的なネットワークを活用する最大の利点の一つは、極めて高いエネルギー効率だ。
Cortical Labsの創設者兼CEOであるホン・ウェン・チョン氏はBloombergのインタビューに対し、同社の生体コンピュータは従来のAIプロセッサのほんのわずかな電力しか消費せず、CL1ユニット1基当たりの消費電力は一般的な手持ちの計算機(電卓)以下であると語った。
具体的な展開計画として、メルボルンの施設には120基のCL1ユニットを設置する。データセンター運営会社・DayOne Data Centersと共同で進められるシンガポールのプロジェクトでは、シンガポール国立大学での初期展開を皮切りに段階的に最大1000基が導入される予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
4
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
5
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
6
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
7
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
8
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
9
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
10
「痺れるほどにミスを繰り返す」Gemini 3.6 Flashは変わった? 公開から1週間、当初のおバカ回答を今検証する
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR