小寺信良のIT大作戦
「BeReal」──若者特有の同調心理を巧みに刺激する“自己露出型サービス”の功罪(2/4 ページ)
BeRealにおける報酬と処罰
1. 写真投稿可能なタイミングは1日1回、全員に突然通知される
この特徴は、自由な時間にいくらでも投稿できる従来のSNSと違い、かなり限定的である。チャンスは1日1回しかなく、しかも全員同時に通知されることで、今というリアルな時間で発生したイベントへの参加意識が高められる。突如始まる「大騒ぎ」のようなものである。
こうした半ば強制的なイベント参加は、学校行事も含め学生時代には散々行われてきたことだ。すでに就職した青年層であっても、いまだ学生のノリが抜けていない者には、懐かしくもたまらない魅力がある。
また所詮は1日1回なので、適当にこなしていればいいという、軽い負荷であるかのように錯覚させている。
3. 写真投稿は2分以内に行わなければならない
4. 成功すれば、好きな時に追加で投稿できる
5. 遅れた場合は遅延時間が表示される
9. 投稿しないと他の人の投稿が見られない
この特徴は、参加者に一定のノルマを強制的に課し、それを達成すれば報酬が、失敗すればペナルティが科されるという状態となる。投稿しなければ人の投稿が見られないのは、ギブアンドテイクでありペナルティとは言えないという意見もあるだろう。だが遅れたら遅延時間が表示されるのは、「こいつは乗り遅れた」というレッテルが貼られるに等しい。
投稿しなければ「いない」ことにされ、遅れれば「ノリが悪いヤツ」とみなされるわけである。これは同じ波に乗っていたい、ハブられたくないという、青年層特有の同調心理を巧みに刺激している。
6. 撮り直しするとその回数が表示される
7. 写真の加工はできない
10. 投稿した写真は24時間で消える
撮り直すことも、写真を加工することも、新しい屈辱として定義されている。これは従来のInstagramに代表されるような、写真は加工しまくり、盛れるだけ盛るという文化に辟易(へきえき)とした、Z世代特有の反動である。
この仕様は、「今」の「生」ではなく、タイミングを測ることや、構図を変えるなどの作為でさえも、極限まで排除することが正しいと錯覚させる。言い方を変えれば、「自己による盗撮」のような写真が要求される。
2分間という時間制限は、全然別のことをやっている状態から投稿モードに気持ちを切り替えるのには、十分とは言えない。こうした仕様と相まって、状況判断をする余裕を奪う。加えて投稿した写真は24時間で消えるという仕様に安心してしまい、「もうこれでいいか」と投稿してしまう。
つまりこれは利用者がうっかりしているわけではなく、うっかり漏れる状況をシステム的に作り出していると考えるべきだ。
2. 写真は前後のカメラで同時に撮影したものに固定される
情報漏えいで大きく問題となるのが、この仕様だ。スマートフォンには前後にカメラがあり、インカメラは自分が映るために神経が行き届くが、アウトカメラの画像は無自覚になりがちだ。
今回問題となった情報漏えいでは、ほぼアウトカメラに意図せず重要な情報が映っていたことが問題となった。これが数年前なら大した騒ぎにはならなかっただろうが、現在はAIを使ったOCR技術や、画像補正技術が進化しており、誰でも無料で利用できる状態にある。
背景のホワイトボードやディスプレイからテキスト情報を読み取ったり、位置を推定したり、生活パターンを分析したりすることも可能だ。これらのテクノロジーが発達したタイミングでの事件であったことも、問題を拡大させている。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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