分かりにくいけれど面白いモノたち
持った瞬間「新しい」 新素材のシャープペンシルがわずかな“ひんやり感”を保つ秘密、三井化学とトンボ鉛筆に聞いた(5/5 ページ)
この新鮮なのに手に馴染む、陶磁器のような感触の素材が、従来のプラスチック同様の工程で量産できるというのが、なんといってもNAGORI最大の利点だろう。まだ、これから普及していく新しい素材だけに、今回のFUMIにしても、税別2000円と、決して安くはないけれど、金属軸のシャープペンシルと比べて極端に高いわけではないし、ましてエボナイト軸の万年筆と比べたら20分の1以下だったりするわけで、十分に普及価格だといえる。
「三井化学さんのお話しで、マーブル成形と相性がいいというのも分かっていました。それで、素材が海のものなので、海の波をイメージしたマーブル模様にすると、非常にコンセプチュアルになるんじゃないかなと考えました。ツルッとさせるより、自然物っぽい感じも出るかなと」と佐藤さん。
しかも、マーブル模様の入り方は個体差があって、同じ入り方をしたものはない。それが「先端素材ではあるけれど、自然由来のもので、しかも唯一無二の一本になる」(佐藤さん)、というのも、素材と製品両方のコンセプトにピッタリ合う。軸の色によってマーブル模様の入り方を変えていたりもしていて、実はかなり凝ったデザインが施されている製品なのだ。自然物っぽく見せるために様々な手を尽すというのは、工業製品のモダニズムといった感じもあって、それも製品の魅力につながっているのだろう。
そういう製品だから、FUMIは、触ってみないとその魅力が伝わらない。デザインに敏感な人なら、その素材感と塊感、マーブル模様の入り方などから「ただ者ではない」感を感じとるかもしれないけれど、見た目もシンプルで目を引く機能もないのだから、うっかりすると見逃してしまう。そこで、パッケージはなんと、箱入りなのに軸を触れるようになっている。さすがに2000円のシャープペンシルを箱なしで売るわけにもいかないけれど、試し書き用の数本だけでは伝わりにくい。しかも、模様に個体差があるという特殊な筆記具ならではのパッケージ。
普及価格で、普段使いのシャープペンシルで、でも、素材から機能、デザイン、プロモーションまで、見事に一貫したコンセプトで作られている筆記具は、普通分かりやすい製品になっているはずだけど、ここまでやってなお「使ってみて初めて分かる」製品になっているというのが、とても面白いし、素晴らしいと思う。そして、すごいことに、買って手にして、使っていれば、簡単に魅力は伝わるし、ついつい手にしてしまうくらい、その持ち心地がクセになる。製品名が「(シャープペンシル)FUMI」なのだから、きっとボールペンも発売されるだろう。それがとても待ち遠しい。
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ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。
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