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立ち話する2人の間には「見えない壁」がある 米研究者が4911人を観察、判明した意外な崩し方
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米カリフォルニア大学サンディエゴ校に所属する研究者らが発表した論文「Invisible walls: how pedestrians navigate around social interactions」は、歩行者が他者の会話などの社会的なやり取りを「見えない壁」として認識し、どのような行動をとるかを検証した研究報告だ。
研究チームは、大学のキャンパス内で4911人の歩行者を対象とした観察実験を行った。具体的には、大学構内の通路にサクラ役の俳優を立たせ、通行人が間を通り抜けるか迂回するかを観察する形で4つの実験を実施した。
第1の実験では、互いに見つめ合うかスマートフォンを見るか、会話するか沈黙するか、約1.5m離れるか約3m離れるかなど、俳優の状態を変更しつつ歩行者の反応を見た。その結果、見つめ合う環境だと通り抜け率は約3分の1に、会話があると約2分の1に下がり、距離を3mから1.5mに縮めると17分の1に低下した。
ただし視線と発話の効果は単純な足し算にならず、見つめ合う2人がさらに話し始めても通り抜けにくさは増えなかった。また男性2人組と比べ、女性2人組の間は約2倍通り抜けられやすかった。
身体の向きだけを操作した第2の実験でも同様の傾向が出た。正対する2人の間を通り抜ける頻度は、45度ずれた配置の約6分の1、背中合わせの約34分の1、誰もいない場合の約62分の1だった。一方、スマホを見ながら歩いていた通行人は約2倍通り抜けており、周囲を見る側の注意の向きも結果を左右していた。
第3の実験では、俳優を1人だけ案内板や壁画の前に立たせ、その俳優が対象に視線を向けているか、スマホを見下ろしている状態で歩行者の反応を見た。俳優が案内板を見ずにスマホを見下ろしている場合は、案内板の前を横切る人は、2人の俳優の間(見つめ合っていない)を通る人の3.57倍横切りが多かった。
しかし、俳優が案内板に視線を向けた途端、横切る起こりやすさは2人が見つめ合っている場合と有意に変わらなくなった。歩行者は視線の向きだけでなく、それが何に向けられ、どのような関与が成立しているかまで推定していることになる。
大きな壁画の前に立つ人については、視線を向けていても遠慮は働かなかった。正面に立たなければ読めず人に遮られやすい案内板と違い、壁画はどこからでも眺められるためだろうと研究者らは推測している。
第4の実験では、集めた99人の学生を、帰り道で通路をふさぐ俳優2人に遭遇させた。何もない場合と椅子2脚だけを置いた場合は全員が通り抜けたのに対し、2人が向かい合っている場合は51人中6人だけがその間を通り抜けた。つまり、人がそこにいてやり取りをしている、という一点が効いたことになる。
この「見えない壁」は絶対的なものではなく、先に通り抜けた人がいると崩れやすくなることもわかった。混雑の程度や授業時間帯の影響を取り除いたうえでも、自分が通る直前に別の歩行者が通り抜けていると、通り抜ける確率は約2.8倍に上がった。実際、3人組が間を通り抜けた直後から、後続の歩行者が同じ経路をたどるようになった。
Source and Image Credits: Terwilliger, Jack, et al. “Invisible walls: how pedestrians navigate around social interactions.” arXiv preprint arXiv:2607.20876 (2026).
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