「AIで効率化しても仕事が増えるだけ」──月○時間浮かせても報告しない社員たち 広がる“AI版静かな退職” (1/2 ページ)
「AIで効率化しても、給料は増えないし仕事が詰め込まれて忙しくなるだけ。上司には黙っておいて、浮いた時間でこっそりサボる」──とあるエンタメ系企業でPRやマーケティングに携わる20代男性のUさん(仮名)は、最近の働き方についてこう話す。
Uさんの職場では数年前に生成AIの利用が認められ、業務資料も一部入力可能に。要約や資料作成など、さまざまな業務をAIで効率化できるようになった。それ以前から生成AIに関心のあったUさんは、自身の業務を効率化するためのワークフローなどを社用のAIツールを活用して独自に構築。月10時間ほどの業務削減に成功したという。
ただ、Uさんはこの事実を同僚や上長には報告していない。「教えてもさらに仕事が増えるか、そうでなくてもノウハウ共有を求められるだけ。評価制度上、仮にやったとしても自分の昇格や昇給にはつながりそうもないので、頑張る意味が見いだせない」と話す。
とはいえ、仕事が済んでいるからといって早く退勤すると怪しまれるため、在宅勤務で働いていることを生かし、浮いた時間は恋愛マッチングアプリに充てている──つまりサボっているという。
Uさんの勤め先には生成AIを活用した効率化やビジネスアイデアを募る取り組みもあるが、これにも非協力的だ。「受かったとしてもらえるのは何万円か。効率化できるなら隠れてするし、事業アイデアがあるなら自分でやったほうがもうかるのでは」(Uさん)
会社を辞めず、一方で向上心も見せず必要最低限の仕事だけをこなす働き方を「静かな退職」と呼ぶが、Uさんも自身の働き方を「20代にして、AIの力で静かな退職をしているようなもの」と表現する。
「『AIで浮いた時間をより本質的な業務に使える』というが、効率化すればするほど仕事が増え、それで給料も上がらないなら取り組むうまみはない。会社には、せめて評価制度の見直しを考えてほしい」(Uさん)
調査で浮かび上がる“成果隠し”の実態
Uさんは極端な例かもしれないが、同じようにAI活用の成果を隠す会社員は少なくなさそうだ。IT企業の米Ivantiが2025年に複数の国で実施した調査によれば、調査対象者の52%が「AIの支援を明かすと、AIが軽減してくれると期待していた業務負担がさらに増える可能性がある」との懸念も示したという。実際にAIによる生産性向上を雇用主に隠す人は全体の32%おり、特に若い世代で顕著だった。
生産性向上を隠す理由はさまざまだが、最も多いのは「秘密があることの優位性」を好むためだった。他にも「仕事がなくなる」「雇用主がAI活用ポリシーを定めていない」「業務が増える」(同率2位)といった懸念も挙がった。
Ivantiは調査結果について「誰がAIによる生産性向上の恩恵を受けるかという点において、雇用主と従業員の間で奇妙かつ憂慮すべき緊張関係が存在する」との見解を示している。Uさんの例も、AIによる“効率化の果実”を従業員が取るか、雇用主が取るかという見方ができるだろう。
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