生成AI画像はなぜ“キショい”のか 消費者が抱く違和感の正体 広報のプロが解説(1/2 ページ)
昨今、生成AIで作成した画像を巡る“炎上”が相次いでいる。味の素の公式Xアカウントで生成AIで加工された画像が投稿され炎上した一件や、飲食店のメニューに載ったサンプル画像が生成AI製で物議を醸した一件は記憶に新しい。
一連の騒動の背景には、生成AIの利用に伴う権利問題への懸念や、データの学習元となったクリエイターへの軽視につながるといった見方がある。同様の考え方による“衝突”は画像生成AIの登場以降、世界中で相次いでおり、今なお解決しない理念的な課題といえる。
ただ、世間の一般消費者全てがこうした意識を抱えているわけではない。今や写真加工アプリなどにも当たり前のように生成AIによる編集機能が搭載されている時代。何の気なしに使っている人も多いはずだ。
それでも生成AI画像が「なんかキショい」などと拒絶され、炎上に至ってしまうのはなぜか──アステリアの執行役員で、長年製造メーカーやIT企業の危機管理広報に携わる長沼史宏さんは「『発信する側が良いと思っているもの』と『受け手が評価するもの』の間に、大きなギャップが生まれている」とみる。
発信者と受け手の間に横たわるギャップ
「企業や団体としては、よりきれいなものを作りたい、完成度の高いポスターにしたい、見栄えを良くしたいと考える。生成AIは、それを低コストかつ短時間で実現できる非常に便利なツール。しかし情報の受け手は、必ずしもきれいで完成度が高いものを求めているわけではない」
長沼さんは生成AI画像の炎上についてこう分析する。生成AIの登場によって、誰でも見栄えのする画像が作成可能になった。ただ、破綻が全くない画像を作ったり、本物との違いがない画像を作ったりするのは、まだまだ簡単ではない。結果として「安易にAIで作ったのではないか」「手を抜いたのではないか」と受け取られる場合もあるという。
別の要因として、生成AI画像が世にあふれる現状も指摘する。今やさまざまな企業がさまざまな生成AIツールを使い、各々画像を生成している。当然、出てくる画像はどれも見栄えを整えた──悪く言えば作為的なものになる。市場に同様の画像があふれれば、そうした見栄えの良さは価値を落とす。
「生成AIによる画像があふれるほど、その反対側にある『人が時間をかけて作ったもの』や『多少不格好でも人間味のあるもの』に、新鮮さや価値を感じるようになる。言い換えれば、受け手は完成した画像だけではなく、その背後にある熱意や愛、さらには『どのように作ったのか』という制作姿勢まで見始めている」
それを象徴するのが、官公庁や個人店舗などが作った素朴なポスターを称賛する動きだ。例えば6月には、農林水産省が作ったいかにも手作りな広報画像がSNS上で反響を呼んだ。長沼さんは同様の動きを、Instagramなどで“盛った画像”が流行した反動により、写真加工をしないSNS「BeReal.」が普及した事実に例える。
「生成AIが普及する以前であれば、色鉛筆などで描かれた素朴なポスターや、いかにもWindows 95の時代を思い出させるようなデザインは、それほど注目されなかったかもしれない。ところが、AIで整ったビジュアルを誰でも簡単に作れる時代になったことで、逆に人が一生懸命作ったことが伝わるものや、あえて飾らないものの希少価値が高まっている」
消費者の「あざといな」も変化
こうした動きは広報・マーケティングの現場にとっても重要だ。長沼さんは「消費者に“あざとい”と思われるものの傾向が変わってきた」と話す。
「広報の現場では、『会社が伝えたいこと』と『メディアや世の中が知りたいこと』『好意的に受け止めてくれること』は違う。社内で『これはすごいニュースだ』『これを訴求したい』と盛り上がっていても、その熱量がそのまま社外に伝わるとは限らない。発信側の思いが強くなればなるほど、受け手の視点を忘れ、自己満足に陥ってしまうことがある。要するに、生成AIの普及によって『何があざといのか?』まで変わってきたのだと思う」
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