小寺信良の「プロフェッショナル×DX」

Adobeそっくり「ArtCraft」の動画編集ツールを試す AIで挙動を再現した“クローンソフト”はアリなのか(2/3 ページ)

 編集機能としては、ソースモニターに素材クリップを表示させ、そこでIN点OUT点を設定、InsertかOverwriteでタイムラインに追記するという、一般的な編集スタイルである。タイムライン上のトリム編集も可能だが、クリップの端をつまんでドラッグしている最中は、音声波形表示も一緒に縮んでしまうので、音声波形を頼りにトリミングできない。そもそもトリム中にクリップ表示が縮むという、その動作そのものが間違っている。細かいところの動作検証ができていないようだ。

 タイトルの機能はまだそれほど多くのパターンがあるわけではなく、基本的なものだけである。このあたりはデザインに著作権があるのか、そのものずばりは再現されていないようだ。とはいえ、デザインプリセットを選択して文字を入れ替え、動きをつけるといった程度のことはできる。

タイトル作成機能もある

 音声処理に関する課題としては、ステレオ集音されたクリップに対して、Lchだけを生かしてセンターへ定位させるといった作業が難しいことが挙げられる。やはりAIで開発が進められている「Palmier Pro」ではこの処理ができなかった。一方FilmCraftには「Audio Track Mixer」というパネルがあり、ここでチャンネルの抽出やステレオ、モノの切り替えができる。

「Audio Track Mixer」で音声トラックのチャンネル処理も可能

 オーディオトラックの編集機能としては、ラウドネス処理や自動でミックスレベルを調整するダッキングといった機能が使える。バージョン1.0に満たないソフトで、ここまでの機能が実装できているのは驚きだ。

ダッキング機能も実装済み

 タイトルのところで音量を上げたあと、再び喋りだすところではダッキングが機能しなかったが、タイムラインツールのペンツールを使ってトラック内にキーフレームを作り、レベルカーブを描くことで手動調整した。

ペンツールでオーディオレベルカーブを描ける

 カラー調整機能も一通り備えており、LUTの読み込みにも対応する。波形モニター表示も種類がそろっており、全体のカラー処理には不自由しない。マスク機能はまだないので、エリアに分けてのグレーディングには対応しない。

カラー調整に必要な波形モニターも充実

 字幕機能も搭載している。ただ音声の自動書き起こしといった機能はなく、字幕トラックを追加して、そこに手動でテキストが打ち込めるといった実装になっている。

字幕挿入機能はある

外部のエージェンティックAIからもコントロール

 エージェンティックAIは、Computer Useといったスキルを使えば、ローカルのソフトウェアを操作できるようになっている。ただMCPサーバを使った操作の方が高速に実行できる。

 FilmCraftも、MCPサーバを使ってコントロールできる。macOS用には別途CLIが配布されており、これをセットアップすればMCPサーバとして利用できる。

 今回は「Codex」を使って操作してみた。まず手動で行ったカラー調整を一括リセットしてみたが、一括動作には対応できないようで、Computer Useによりクリップ1つ1つに対してリセットするという方法で実行された。

 続いて全体をシネマトーンにするというコマンドを投げてみたところ、これもクリップ1つ1つに対して個別に実行された。もともとLookとして「Warm Film」というトーンを持っており、それを使いつつ他のパラメーターで微調整するという方法だった。

カラー補正もAIで対応できる

 FilmCraftは、クリップに施されたエフェクトなどの変更点をコピーし、それを他のクリップにペーストするという機能もある。それを使えば早かったと思うが、AIはまめに1個1個のクリップに対して同じ動作を繰り返すという方法を選んだようだ。AIにはめんどくさいという概念がない。

ペーストするパラメーターを選択できる

 自動文字起こしは現在のFilmCraftに機能がないのだが、AIに指示するとどうなるのか試してみた。するとAIはローカルで文字起こししたのち、それを字幕トラックに貼り付けるという動作となった。この部分はMCPで動作できるようで、Computer Useは使われず、あっという間に完了した。

ローカルに音声ファイルのみを書き出し、そこから文字起こしを実行

 文字挿入のタイミングも正確で、「あー」とか「えー」というフィラーワードは自動的に文字起こしから省略されている。FilmCraftにない機能は、エージェンティックAIを使ってカバーできるので、いろいろトライできそうだ。

FilmCraftで編集した動画サンプル
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小寺信良の「プロフェッショナル×DX」

クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。

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