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自治体のExcelファイルを“5つ星”オープンデータ化 jig.jpがプラットフォーム開発 鯖江市が採用

» 2014年06月04日 16時26分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 jig.jpは6月4日、自治体向けのオープンデータプラットフォーム(odp)の販売を開始した。自治体が持つExcelデータをWebサイトからアップロードするだけで、汎用性の高いRDF形式に変換して公開できる。まず福井県鯖江市が採用し、民間の開発者によるデータ活用に期待。今後、全国の自治体に導入を働きかける。

 オープンデータとは、誰もが自由に再利用できるようデータを公開すること。欧米政府を中心に取り組みが進んでおり、例えば米国政府は、保有するさまざまなデータセットを提供するサイト「Data.gov」を運営している。国内自治体では鯖江市を皮切りに、千葉県流山市など30以上の自治体がさまざまなデータを公開。民間の開発者などがデータを活用し、サービスやアプリを開発している。

 ただ、公開されたデータの形式がふぞろいだと、アプリなどで再利用しにくくなる。Webの考案者で、オープンデータを推進しているティム・バーナーズ・リーは、公開されたデータの形式を、汎用性が低い順に、「☆1」から「☆5」までランク付けすることを提唱。国内自治体の多くが利用しているExcelは「☆2」、CSVは「☆3」に当たる。

 jig.jpのオープンデータプラットフォームは、自治体が手持ちのデータを専用のExcelのテンプレートに転記し、専用のWebサイトにアップするだけで、最高レベル「☆5」オープンデータ形式「Linked-RDF」に変換できるというものだ。オープンデータやRDFの専門知識がなくても、Excelデータを用意するだけで簡単にLinked-RDF化できるのが売り。基本パッケージが年間150万円。

 変換されたデータは、開発者用サイト「SPARQL Endpoint」で公開。開発者は、オープンデータ活用のためのクエリー言語「SPARQL」を使い、同サイトを通じてデータを簡単に引き出せる。公開されたデータを活用した地域住民向けアプリなどを、オープンデータに興味を持つ開発者に開発してもらう狙いだ。

 オプションとして、自治体が公開したオープンデータ情報を一般ユーザー向けに告知するサイトと、公開されたデータをカタログ化したサイトの構築・運用を、年間50万円で請け負う。

 アマゾンデータサービスジャパンとSAPジャパンが、オープンデータプラットフォームの展開に協力する。サーバには、Amazon Web Services(AWS)を活用。登録データが増え、処理の負荷が重くなってきた段階で、SAPのリアルタイム分析製品「HANA」(High-Performance Analytic Appliance)を導入する。SAPは、顧客の自治体にオープンデータプラットフォームを紹介したり、開発者コミュニティーにアプリ開発を呼びかけるなどの協力も行う。

オープンデータで「市民が主役の街作りを」 鯖江市長

画像 左からアマゾンデータサービスジャパン技術統括本部長の玉川憲さん、牧野市長、福野社長、SAPジャパンのクラウドファースト事業本部シニアマネージャー・吉越輝信さん

 jig.jpは福井県鯖江市に開発拠点を置いており、福野泰介社長は以前から、市のIT化に協力してきた。2010年には牧野百男市長に、市が保有するデータのオープンデータ化を提案。牧野市長が即決で採用し、これまでに市内のトイレ情報やAED情報、道路工事情報など40近くのデータを公開。福野社長がそれらを使ったアプリを80種類も開発してきた。

 オープンデータプラットフォームは、鯖江市と福野社長の取り組みの成果から生まれたものだ。4日に都内で会見した牧野市長は、「市民が主役の街作りには情報の共有が大事。オープンデータは双方向のやりとりができる」と話す。

 福野社長は、「行政がデータを公開するだけで、民間がサービスを作るという新しい市民協働が可能になる」とアピール。RDF形式でのデータ公開が国内外でさらに進めば、1つのアプリでさまざまな地域のデータを扱えるようになり、アプリ開発者にとってビジネスチャンスも増えるとの展望を示した。

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