AI生成の“非実在美女”が、甘い言葉や愛国ワードで懐を狙う――お隣中国の最新AI事情(1/3 ページ)
「AIが人間に取って代わる労働力となるかどうか」が中国でも危惧されているが、フォロワーを集めきれていない動画配信者が失業危機を迎えるかもしれない。
ChatGPTやmidjourneyなどで火がついた生成AIブームから1年。ネットの壁を構築する中国でも、壁を超えてでもこれらを利用しようとする動きや、西側に負けじと中国でも生成AIやサービスが続々と登場している。バイトダンスの抖音(中国向けTikTok。発音はドウイン)などのショート動画サービスなどでは、AIによって生成された非実在の動画配信者が一部の男性層を虜にし、お金を貢がせている。
非実在配信者で一番有名なアカウントは「巧克力,小檸檬(以下巧克力)」というアカウントだ。チョコレート、リトルレモンという意味で、間の「,」も彼女の固有名詞に含まれる。動画における表示はだいたい上半身でショートカットの巧克力だが、日本のアプリやサイトで誰に似ているかと画像を入れたところ、顔のパーツが似ているのか「佐々木希」と出た。
そんな彼女は動画内で疲れた中高年男性を癒すような笑顔と言葉を武器に、世の男性が思っているだろう悩みについて、30秒程度の動画で「私には分かりますよ」と言わんばかりに優しく語りかける。抖音のレポートによれば90日で351本もの動画をアップしていて、これは中高年向け動画配信者の中で3番目の数なんだとか。ちなみに1位2位は500本台で一日平均で5、6本動画をアップする計算となる。
巧克力が見つめながら話す内容といえば「なぜ今、多くの男性が一人で生きることを選ぶのですか?」「性格の良い男性は社交的ではありません」「孤独を楽しめる男性は、普通の人ではありません」「男性をあまりにも長い間一人にしておくと、機会があっても孤独を選ぶでしょう」といったまるでスナックのママかのように傷ついた男性を癒やすようなものだ。
下手なリアル志向のバーチャルキャラクターよりも本物に近く、見慣れていない人ならば、これが生成AIによるCGだと気付かないだろう。しかしながらよく見ると、異なる動画で声が異なっていたり、声と口の動作があっていなかったりと粗も確認できる。
巧克力は1000万人を超えるフォロワーを抱え、コメント欄には視聴者の多くの誠実なメッセージが書き込まれている。ユーザー傾向を見ると、約500万人が50代以上、約350万人が40代であり、男女比でいえば男性が多く、つまりは中国人のおじさんらの気持ちを癒やしている。
中国メディアによれば「インターネットの日常生活に慣れている若者は当然ある程度の識別能力を持っているが、AIテクノロジーを理解していない地方都市のユーザーにとっては、それらを識別するのは簡単ではない」としたうえで「彼らは見分けがつかず、本物だと信じ見入っている」という。
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