小寺信良のIT大作戦
日本勢が取り込みづらい“エモ需要”まで――カメラ市場に欠かせなくなった中国ブランド群(1/3 ページ)
カメラと写真のワールドプレミアショー「CP+」が、今年もパシフィコ横浜で開催された。以前は写真関係の展示がメイン会場で、動画関係は別会場に分かれていたが、昨今はあまり写真と動画を区別せず、同じメインホールで展示するようになっている。
ホール奥はソニー、ニコン、富士フイルム、キヤノンの4大メーカーが巨大ブースを構え、手前にはパナソニック、ケンコー・トキナー、タムロン、シグマ、OMデジタルソリューションズが中規模ブースを構えた。その間に小さなコマで多数の企業が出展するという布陣である。
面白いソリューションは小さいコマにこそあるわけだが、実際に会場を歩いてみると、中国企業のブースがかなり多い印象を受けた。この傾向は2025年11月の「Inter BEE」(国際放送機器展)でも見られたところだが、CP+の方がより顕著である。
25年11月、高市首相の台湾有事発言を契機として、中国からの政治的圧力が高まっているところではあるが、中国企業の日本向けのセールスは、ことカメラ製品に関しては減速する気配がないように見える。今回はCP+ 2026に出展されていた数多くの中国製品を取材することができた。
多彩な中国ブランドを取りそろえる焦点工房
中国製のレンズは、低価格ながらもよく写るとして人気に火が付いたが、昨今はシネマレンズクラスの製品も出すようなメーカーも登場し、層の厚みが出てきた印象である。
多数の中国ブランド、いわゆる中華レンズといわれるものを一手に取り扱うのが、焦点工房だ。ブース中央にレンズバーを設け、その中に立つチャイナドレスのモデルを実際にレンズを装着して撮影できるということもあり、多くの来場者でごった返していた。
その中でも「Thypoch(タイポック)」は、25年9月に焦点工房が代理店契約を締結したばかりの中国ブランドである。母体となるメーカーの中国東正光学は、19年よりシネマレンズブランド「DZOFILM」を展開してきたが、「Thypoch」は23年に立ち上げた新規ブランドだ。より低価格で入手しやすい価格帯のレンズを展開している。
「Thypoch Eureka 28mm f/2.8 ASPH.」は上質な質感のクラシックレンズで、まだ国内では出荷されていないモデルである。イルフォード向けの英国製レンズDallmeyerのイメージで設計されており、趣味性の高いレンズだ。
中国LIGHT LENS LABの「LIGHT M 50mm f/2」は、1940年代のシネマレンズ「Cooke Speed Panchro Series II 50mm f/2」のレンズ設計を踏襲することで、描画を再現したレンズだ。
過去の名レンズは本物も中古で入手可能だが、今となってはマウントが合わない、状態の割には価格が高騰しているといった課題があり、アマチュアにはなかなか手が出せないところである。
過去のレンズ設計を再現した新品レンズの生産は、まさに中国メーカーの得意とするところである。またユーザーも、昨今のレンズのシャープさではなく、にじみなどの昔のレンズ描写を楽しみたいというニーズが高まっており、すでに入手困難となったオリジナルレンズの代替として購入されるケースがあるという。
また七工匠ブランドからは、APS-C向け18mm/F6.3 「Dionysus」というパンケーキレンズが展示されていた。マニュアルフォーカスで基本的には無限遠での撮影になるが、マニュアルでピントリングがある。
ピントリングにはトルクがあり、手を離すと無限遠に戻ってしまうので、手前にフォーカスを合わせているときはずっとピントリングを押さえておかなければならない。こうした遊び心があるのも、中華レンズの魅力といえる。
またマウントアダプターの進化も見逃せないところだ。とにかくつけられればいいという筒型製品の時代は終わり、いかに電子接点を使ってオールドレンズを今のカメラで動かすかに焦点が変わってきている。まだ試作機ではあるが、ニコンのカニヅメFマウントレンズの露出リングの値をボディー側に伝えるものが展示されていた。
さらにはAFが使えないオールドレンズでも、マウントアダプターでヘリコイドを前後させてAF機能を再現するといった製品も出てきており、老眼でフォーカスの山がつかめない層にも安心してオールドレンズが使える時代が到来している。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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