「YouTubeの違法コンテンツも見るだけで違法」は誤解だが……
「YouTubeの違法動画を見るだけで違法になる公算が強まった」とする一部報道について、文化庁の担当者は「誤解を招く表現」とし、ストリーミングについては議論の対象外だと話した。
「私的録音録画補償金」制度の見直しを検討するため、文化庁文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の会合が9月26日に開かれた。中間整理案提出に向けて最後の会合となった今回は、著作物の複製を「私的使用」として認める範囲を定めた著作権法第30条の適用範囲について改めて議論があった。
第30条の適用範囲についての議論は、録音物・録画物だけを対象に行われている。中間整理案には、海賊版からのコピーや違法公開サイトからのダウンロードについて「『情を知って』(海賊版・違法サイトと知って)いた場合は私的使用の範囲から外し、違法とすべき」という意見が「大勢であった」と記載されており、一部報道ではこれをもとに「YouTubeのようなストリーミング配信サイトで違法公開されたコンテンツを閲覧する場合も、違法となる公算が大きくなった」といった解説がなされていた。
これについて文化庁の川瀬真著作物流通推進室長は「報道で、動画投稿サイトの視聴が違法になるかのような誤解を招く表現があった」とし、小委員会の議論の対象はあくまでダウンロードサービスと説明。YouTubeのようにダウンロードを伴わないストリーミング配信サービスはそもそも検討の対象外とし、中間整理案の脚注に新たに「ストリーミング配信サービスは検討の対象外」との記述を加えた。
ただキャッシュとして一時的にPC本体に蓄積する場合や、ストリーミングを保存できるソフトも販売されていることを考えると「ストリーミングはダウンロード(=複製)ではない」と言い切ることは難しい。ストリーミングの扱いについては今後、同委員会とは別に著作権分科会に設けられたデジタル対応ワーキングチームなどで議論する予定という。
違法サイトからのDLは違法に、という意見は「大勢だった」のか
中間報告案には、私的使用の範囲について「違法サイトと知っていたなど『情を知って』録音録画した場合などは、私的使用の範囲から除外する」という前述の意見のほか、海賊版からのコピーや違法サイトからのダウンロードについて「現行のまま私的使用として認める」という意見も併記されている。
ただ前者が「大勢であった」と記載されており、IT・音楽ジャーナリストの津田大介委員はこの表現が納得できないと主張する。
「海賊版からのコピーや違法サイトからのダウンロードを私的使用の範囲外にするという意見については、積極的に賛成するというよりは消極的に容認した委員が多かったように思う。どのような立場の委員が賛成していたのかなどを明記する必要があるのではないか」(津田委員)
これに対して中山信弘主査(東京大学教授)は「誰が何を発言したかは議事録で公開されており、中間整理案のこの部分にだけ、誰がどのように発言したかを書くことはできない」とした。
津田委員はさらに「30条が改正されれば、違法サイトからのダウンロードが違法であるとの啓発活動も活発にされるだろうが、その一方で例えばJASRAC(日本音楽著作権協会)の名前をかたって『おまえは違法サイトからダウンロードしたから金を払え』というような架空請求が増える可能性がある。ユーザーにとって違法サイトかどうかの判断は難しく、架空請求の被害を受ける可能性がある」と懸念を表明した。
また、私的使用目的の違法複製については従来から罰則がない。津田委員は「罰則の適用がないにも関わらず適用範囲を広げれば、ユーザーに混乱を与えるだけ」とも指摘した。
中間整理案は10月12日の著作権分科会で報告され、その後1カ月間パブリックコメントを募集。来年1月に報告書をまとめる。
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