博報堂が展開するAR広告「テノヒラアド」って何だ?
「セカイカメラ」のヒットもあり、最近さらなる注目を集めているAR技術(拡張現実)。このARを使った新しい広告を、博報堂と慶應義塾大学、IMJが開発。11月から新聞広告が始まっている。
博報堂DYメディアパートナーズ、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科デジタルライフプロジェクト(稲見昌彦教授)、アイ・エム・ジェイ(IMJ)は、11月25日、ARを利用した広告商品「テノヒラアド」を開発したと発表した。テノヒラアドは、すでに11月中旬より新聞広告で展開中だ。
ARとはAugmented Realityの略で、「拡張現実感」などと訳される。人間が見たり聞いたりする実空間の中に、コンピュータで作った映像・音声やテキスト情報など、バーチャルな情報を重ねる技術と考えてもらえばいい。
ARを使った広告とは、そしてテノヒラアドとはどのようなものなのだろうか?
新聞広告を切り取ってカメラにかざす
ARというと、一昔前はメガネ型のヘッドマウンドディスプレイをかけて対象物を見るものが主流だった。アニメ『ドラゴンボール』の「スカウター」を想像していただくのが近いだろう。目で見ているリアルな相手の姿に重ねるように、その相手についてのデータが表示される。これはARの1つの姿だ。
最近ではセカイカメラ(参照記事)などがAR技術の代表例といえる。携帯電話のカメラ越しに建物などの対象物を見ると、その建物や場所についての情報がふきだしのように表示される(エアタグ)。これは、位置情報を使って対象物を特定し、そこに対応するデータを重ね合わせて表示している。携帯電話の性能が上がり、通信インフラが充実して、皆が高性能な携帯をコンピュータにつながったカメラとして、外に持ち出せるようになったからこそ実現したAR技術といえる。
さて、テノヒラアドはこれらとは違い、屋内で使うものだ。紙に印刷されたマーカー(画像認証させるマーク)をPCに接続したWebカメラで写す。すると、Webカメラが映すマーカーの画面上に、立体画像などが重ねて表示されるという仕組みになっている。
すでにテノヒラアドを採用した広告は始まっている。11月16日付の日経新聞に掲載された住友商事の広告には、左上にマーカーが印刷されている。ユーザーはこのマーカーを切り取り、PCに接続したWebカメラで撮影すると、地球の立体画面が表示される。地球はマウスで動かすことができ、地球の上にプロットされた点ごとに、世界各地にある住友商事の事業所の情報や、そこで働く人たちの紹介コンテンツが表示されるようになっている。博報堂DYメディアパートナーズによれば、ARを使った新聞広告は日本初だという。
紙面とネットを“融合”する
従来も“紙+ネット”の広告はあったが、新聞とARを組み合わせた広告はどこが新しいのだろうか。「URLを入力したり、キーワードを検索したり、QRコードを読み取ったりという形は、紙面からネットへの“誘導”。これに対し、AR広告では紙面とネットの“融合”を可能にする」(博報堂DYメディアパートナーズ)
住友商事の例では就職活動の学生を意識したブランディング広告としての使い方だが、博報堂DYメディアパートナーズでは今後テノヒラアドを、新商品のプロモーションとしても使いたいと考えているという。デモでは、2つの使い方が示された。
1つは、実物大に印刷された携帯電話の写真をマーカーとして用いるもの。写真を切り取り、Webカメラにかざすと、実物大の画像が立体的に表示される。これを動かすことで、さまざまな角度から立体的に携帯電話の形をチェックできるというデモだ。もう1つは、インスタントのカップ麺を使ったゲーム。カップに印刷されたマーカーをカメラにかざすと、3分間遊べるゲームが表示される、というデモ。例えばブロック崩しゲームであれば、ブロックを角切りチャーシューにするなどのアレンジで「ブランドの世界観に合わせたエンターテインメントコンテンツを提供できる」(同上)
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