コミュニティー運営の要諦
みんなが気持ちよく過ごせる場をつくること、それが私の役割
「日本中小企業情報化支援協議会」は、中小企業を支援するビジネスプロデューサー(コンサルタント)の育成や派遣を行う団体、会員数は520人にものぼる。個性豊かな会員を束ねているのは、会員より年齢も経験も若いナレッジネットワークのビジネスコーディネーター千葉雅美さんだ。
相談相手であり、長女であり
「私は皆さんの調整役なんです」。会員にとってあなたはどんな存在かという筆者の質問に、千葉さんはにこやかに答えた。いまでこそオンライン/オフラインでのコミュニケーションが活発に行われている協議会だが、始まったころは誰も発言をしない静かなコミュニティーだったという。ビジネスプロデューサーたちは専門分野が確立されており、プライドが高い。また、もともと組織で連携して仕事をするよりも、一匹オオカミ的に個を生かしたビジネスをしている人が多いという背景があるからだと推測される。
そこで千葉さんが心掛けたのは、会員どおしの仲介役をすること。「例えば新しく会員になる人がいたら、その人の代わりに私が宣伝したりアピールしたりするんです。自分で自分のことを宣伝するのに抵抗ある人は多いと思うし、初対面の人の自慢話は聞きたくなくても、私の話なら聞いてくれるかもしれないから」。
会話があまりはずんでいないグループを見かけたら、積極的に質問を投げかける。そのときには「あなたは、どう思いますか?」とあいまいに問うのではなく、三択にしてその理由を尋ねるようにすると、引っ込み思案の人でも話しやすくなるそうだ。
年配の会員からの相談を受けることも多い。彼女には守秘義務があるから安心するのか、同業者ではないから話しやすいからなのか。理由は定かではないが、千葉さんがじっくり話を聞くと、特にアドバイスはしなくても、聞いてくれたことに安心し納得してくれるらしい。「そう考えると私の存在は、皆さんにとっての調整役であり、つなぎ役であり、相談相手であり、全部ひっくるめて『長女』みたいなものなのかなあ」。
コミュニティーの雰囲気は、みんなが作る
協議会メンバーはオフラインで集まることもあるが、普段はオンライン(Facebookのグループ)でコミュニケーションを取っている。共通の話題で意見交換したり、協力メンバーを募集したりといった、さまざまな用途のメッセージが日々グループ内を飛び交っている。
ネット上でのコミュニケーションは難しい。千葉さん自身はできるだけあいさつやそのときどきのメッセージを書き加え、文字だけでは伝わりにくい親しみや感情を表現するようにしているという。しかし、すべての人にそれができるわけではないし、そもそもそのようなやり取り(用件以外のことを書くなど)をうとわしく思う人もいる。相手のことをあまり考えずに極端な行動を取る人も中にはいる。
以前、誰かが投稿するとすぐさまそれを否定するコメントを書きこむ、というネガティブな行動を取る会員がいたことがあった。千葉さんが注意してもその人の行動は改まらなかったが、コミュニティーのコアメンバーがその会員をたしなめたり、ネガティブコメントにかぶせるようにポジティブコメントを書きこむようにしてくれたところ、ほどなく問題は収束した。
そのとき千葉さんは「コミュニティーは誰かひとりが作るものではない」と改めて感じた。コミュニティーの雰囲気は中心となる顔ぶれによって、日々刻々と変化していく。自分ひとりでなんとかしようとするのではなく、困ったことやトラブルが起こったときは、そのときのコアメンバーで話し合って決めていけばよいのだ、と。
ルールは誰のために?
それ以来協議会のコミュニティーでは、問題が起こったときは話し合いで解決することにしている。だが規模が大きくなってきた今、その方法はいつまで最適解として機能するのか。コミュニティーを運営するためにルールを作るべきかと問いかけたところ、千葉さんはしばらく考えて言葉を選びつつ答えてくれた。
「ルールを作るべきか否か。それは、ルールがあるのとないのとどちらの方が皆さんにとってやりやすいかを基準にして決めたいです。でもたとえルールを作ることになったとしても、強制的に従わせるようなものにはしたくありません」。表現方法も「●●は禁止する」というような否定的なものではなく、「●●しよう」というようなポジティブなものにしたい。「だってルールは、みんなが気持ちよく過ごすためのものだから」。
千葉さんは2012年春に、これまでとは違うタイプのコミュニティーを新しく立ちあげる。メンバーが自主的に和を広げることをサポートしてきた彼女のことだから、新しいコミュニティーもきっと暖かく活気のある場に育つことだろう。彼女の新しいチャレンジを心から応援したい。
千葉雅美さんのコミュニティー運営のポイント
- 自分は調整役、つなぎ役に徹する
- 問題が起こったときは、そのときのコアメンバーで話し合って決める
- ルールをつくるときは、どうすればみんなが気持ちく過ごせるかを軸に考える
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コミュニティ運営の要諦
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