「使ってもらえないと意味がない」――大ヒットした警視庁の“痴漢撃退アプリ”、開発者のこだわり
「やめてください!」――アプリの画面をタップすると、スマートフォンから大音量で警告音が鳴り響く。真っ赤な背景に「痴漢です 助けてください」と表示される画面は、混雑した電車内でも目に飛び込んでくるほどインパクトがある。
警視庁が提供する、そんな無料の防犯アプリ「Digi Police」(デジポリス)が注目を集めている。ダウンロード数は約26万9000件(6月7日時点)と、行政機関がリリースしたスマホアプリでは異例のヒットを記録している。
警視庁 犯罪抑止対策本部の鳥谷峯(とやみね)慶子さんは、特に「今年に入ってからダウンロード数が伸びた」という。アイドルグループ「NGT48」のメンバーが男性に襲われた事件をきっかけに、Twitter上で「お勧めしたいアプリ」として話題に。マスコミが防犯手段として紹介したことや、警視庁が今年3月に同アプリをリニューアルしたことも、ダウンロード増につながった。
警視庁のヒットアプリは、どのようにして生まれたのか。企画・開発の経緯を鳥谷峯さんに聞いた。
「使ってもらえないと意味がない」
デジポリスは、警視庁が2016年3月に公開したアプリ。当初は「オレオレ詐欺」などの特殊詐欺への注意喚起が主な目的だったが、その後、痴漢被害を周囲に知らせる「痴漢撃退機能」の他、大音量のブザー音が鳴り、事前指定にした連絡先へとメールが届く「防犯ブザー」などの機能を追加。いずれもユーザーの要望を踏まえて取り入れた。
痴漢撃退機能は、若い女性から寄せられた「痴漢に遭っても声を出せない」という課題に応えたもの。アナウンス音声は「やめてください」という言葉だけで、画面は「痴漢です」と一見して伝わるデザインを採用。被害者が声を出せなくても、周囲にスマホを見せるだけで助けを求められる。
デジポリスが支持されている理由の1つは、こうしたユーザーの使いやすさにこだわった点だ。アプリ画面の下部にあるメニューは「防犯ブザー」「ホーム」「痴漢撃退」だけに絞り、緊急時も直感的に操作できるようにしている。
鳥谷峯氏は「誰が見ても機能が伝わるシンプルさや、(目的の画面を開くまでの)タップの回数にもこだわっている。使ってもらえないと意味がない」と話す。「ホーム」メニューの上部には、ニュースアプリのようにコンテンツごとにタブを設け、横にスワイプして閲覧できる仕組みにした。
これらは今年3月、画面構成や機能の使いやすさを見直し、改善したものだ。スマホの操作に慣れた世代に使ってもらえるように、こだわったという。
痴漢撃退機能を“入り口”に、他のコンテンツも訴求
デジポリスの機能はこれだけではない。3月のリニューアルでは、子どもの見守り機能を強化した。アプリのトップ画面には、交番やコンビニの位置が分かる地図を表示し、ユーザーが指定した地域の犯罪・不審者情報をひと目で確認できるようにした(東京都のみ対応)。犯罪情報はLINEやメールで共有できるため、親がキッズケータイを利用している子どもに注意喚起するといった活用を見込む。
マップで共有する位置情報には、ユーザーがコメントを付けることも可能。暗い路地や交通量が多い道路などを近所同士で共有できる。
散らばったり、Webページの深い階層に掲載していた情報を一箇所にまとめられることもスマホアプリのメリットだ。デジポリスには、警視庁のWebサイトに掲載している防犯コラムを転載している他、開発当初からの目的でもある特殊詐欺を防ぐためのコンテンツも載せている。実際の詐欺事件に使われた電話音声や、防犯カメラなどに写った犯人の写真もアプリ上で視聴可能だ。
鳥谷峯氏は「危機意識を持ってダウンロードしてもらえるとありがたい。痴漢撃退機能や防犯ブザーを起点に、(特殊詐欺など)さまざまなコンテンツにも日ごろから触れてほしい」と期待を寄せている。
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